4日目 『どうも。』 クラスからは期待外れだという声が少しだけ聞こえてきたが、誰かがそれに静止の声をかけたことによって静かになった。 beauty 他の男子生徒たちは大抵が男かと残念そうにしていた。まあいくら金持ちと言えどそういうところは庶民と何ら変わりないんじゃないかと思う。それを表に出しているかどうかの違いだけ。 皆の反応に反して僕は素直に嬉しかった。まさかまた会えるとは思っていなかったし、噂の転入生が彼のことだとも思わなかったから。光は気づいていたらしく彼に向かって嬉しそうに微笑んでいた。やっぱり僕らは双子だ。好きになるものがいつも決まって同じ。光も聖亜に興味あるみたいだし。 「じゃあ、自己紹介してくれ。」 『佐藤 聖亜です、以上です。』 「いや、趣味とか好きなものとか…」 『んー特に。』 そのやり取りに思わず吹いてしまった。これはハルヒ以上かも。光も同じことを考えたのか僕と同様に腹を抱えて必死に笑いを堪えてた。そこで初めて僕達に気付いたらしく目が合ったのでヒラヒラと手を振っておいた。 『せんせー、僕、あの辺がいいです。』 「何だ常陸院と知り合いか。」 『はい、まあ。』 それなら、と先生は僕と光の近くに聖亜の席を用意した。僕らの間の席にはもう既にハルヒがいるから、僕の前に。光からは少し遠いけど、仕様がない。次の席替えまで待ってもらおう。 『光に馨。』 「「何ー。」」 『よろしくー、……一応。』 最後の一言は余計だとか言いたいことは色々あるけど、そう言って微笑む聖亜に見とれただなんて言えるはずもなく、誤魔化しながら「コチラコソー。」と言っておいた。 『あー…そちらさんは』 「あ、藤岡ハルヒです。」 ハルヒが聖亜のことを見ていたらそれに気付いたらしい彼はそう尋ねる。ハルヒは直接話したりはしていないけど聖亜のことを一度見ていたから、それなりに気にはなっていたんだろう。 (まあ、普通廊下で寝てた人なんて印象が強すぎて流石のハルヒも覚えているはずだ。) 『よろしくー、ハルヒちゃん。』 「はい、こちらこそ…ってえぇ!?」 『どうかした?』 何事もなかったかの様にそう言う聖亜。僕達も吃驚して口が開いている。でも授業の始まりを告げるチャイムがなって、その話は一時中断となった。 「「あのさ、聖亜…」」 『なーにー…ふわぁ…』 聖亜はやる気なく欠伸なんかしながらそう答える。常に眠そうなのはどうしてなんだろう。 でも今はそんなことよりこっちの方が優先。もしかして一目見ただけでハルヒが女だとバレてるかもしれない。 「さっき…ハルヒちゃん、って言ったよね?」 光がそう言えばさも当たり前のように、うん。と返事した。これにはハルヒも動揺を隠せていない。ボサノバっちの時のようにバレたのならまだしも、今回は話が違う。聖亜はロベリアのヅカ部とも違うだろうし。あの人等は特殊だから。 『んー…それがどう、かした?』 途中、欠伸で言葉が途切れそうになるのを何とか繋げて言った。そして、どう見ても女の子だと付け足す。どうして分かったのか、と問いかけると、何となく。だそうだ。 何となく、で簡単にバレてしまっては意味がない。しかも聖亜はハルヒが男子用の制服を着ていることにも気づいていなかったらしく今言われて初めて知ったらしい。 嵐の転校生 (意外と、あなどれない奴。) [*back][next#] |