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3日目


再び目を覚ますと、そこにいたのは見知らぬ美少年Aでした。






Sleeping
 beauty









『あれ……誰、君。』

目の前にいる少年に寝起きでまだ頭が覚醒しないまま僕は尋ねた。
よく見てみると先程会った常陸、何とか…馨…?とかいう奴にそっくりの顔で少し吃驚した。これが世に言うドッペルゲンガーってやつ?あ、でもそしたら馨がこの人に会ったら死んじゃうじゃん。気をつける様に言ってあげないと。

「おい。」

僕が彼を見たままそんなことを冷静に考えてたみれば、その視線に耐えられなくなったらしい当人は軽く眉間に皺を寄せながら僕に声をかけてきた。僕の意識もそこでやっと戻ってきた訳だけど。

『えーと、何、見知らぬ美少年A。』

取りあえず、名前が分からなかったので僕から見た彼の印象をそのまま言ってみれば彼はさらに眉間の皺を増やしてから溜め息を溢した。その後に少しだけ呆れたように苦笑する。失礼な。

『ねえ、ここに馨って言うのが居なかった?』

ずっと疑問に思っていたことを問いかけてみる。あの後また眠くなってしまった僕が馨にそれを告げると、自分がいるからそのまま寝てもいいと言ったのでその好意に甘えさせてもらった。そして目を覚まして今に至る訳だ。彼を見てみると一瞬目を点にした後に声を殺して笑いだした。

『……何。』

何だか馬鹿にされた気分になり、少しだけ悪意を込めてそう返せば、そんなもの何とも思っていないらしく、悪い、とまだお腹を抱えながら、おそらくは笑いすぎで出たのだろう涙を長い指でぬぐって言った。

「馨は僕のお、と、う、と。」

そう言いながら僕の方へ寄ってきて悪戯っぽく笑う。無駄に近くに顔を寄せられてまじまじと僕を見てくる。何がしたいのかさっぱり分からない僕はそのままの状態でいた。

「馨はこれのどこがいいんだか…。」

『は?』

人のことを必要以上にがん見してきた上に「これ」呼ばわり。その言葉の意味は分からないけど多分の「これ」っていうのは僕のことを指して言ってるんだと思う。彼は僕に異常に近づいていた顔を離すと両手を頭の後ろで組んでまた笑いながら言う。

「光。常陸院、光な。」

光は自分を指差しながらそう言った。名前を頭の中で連呼して忘れないように心がける。僕はよく人の名前を忘れてしまうから、気をつけておかないと。前まではさほど気にしていなかったがこの学校の人逹ってなんか傷つきやすそうだし。

「てゆうか、普通顔で双子だって気づくでしょ。」

『……ドッペルゲンガーかと。』

そう呟けばまた笑いだす。ああ、腹がたつ。何で会って間もない人にここまで馬鹿にされてるんだ。

「でも、よく見分けついたよネ。普通の人なら絶対出来ないはずなのに。」

今度は、嬉しそうな笑顔で言った。その顔が本当に喜んでいるようで、なんとなく目を反らしてしまった。というか、今日はよく他人に普通じゃない人扱いをされている気がする。やっぱり金持ちとは合わないのか。こんなんで僕、明日から大丈夫なのかなあ。

「聞いてた?」

ふいに声をかけられて、また意識がとんでいたことにやっと気づく。その様子から察してくれたらしい光が、また溜め息を落とした。

「だから、学年とクラス。」

『ああ、一年。クラスは分かんない。今から聞きに行って、明日から学校だから。』

そう。今日は編入前日の下見でここへ来ていた。一応学校へ行くのだからと思い、制服っぽい服を着て。黒のズボンにワイシャツとカーディガン。ここの制服は高すぎてとてもじゃないが庶民に買えるようなものではなかった。それに僕はヒラヒラフワフワしたものが嫌いだからこれはこれで調度良いかもしれない。(ここの女子用制服を見た時は絶句した。もはやこれは制服ではないとさえ思う程に。)

「え、じゃあ噂の編入生ってあんたなんだ。」

『噂?』

「この時期に編入なんて珍しいからよっぽどの金持ちか、秀才か、って話だけど」

光はそこで一旦話を止めて僕に視線を移し、どう見ても後者だと付け加えた。それに僕が言い返そうとした時、調度同時に時計の音が鳴り響く。すると光は時間を確認してドアへ手をかけながら。

「それじゃあ僕そろそろ帰るネー、聖亜。」

『何で名前、』

「あ、馨から伝言で、用事できたから光に付いててもらうよ、って。」

それだけ言うと光は姿を消した。






(伝言言うの遅いし。)








笑顔が印象的な君。

(何だったんだ一体。)
(ていうか職員室どこ…。)


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