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いつかはボロが出る




「くぁ、…ん〜まあまあだったネ」

『ん、』




あれ、なんだかあたし普通にこの状況を受け入れてないか。あれれ、おかしいな。
















空に歌う
13:いつかはボロが出る


















映画館から出てきたあたし達。神威はというと空になったLサイズのポップコーン6箱をごみ箱に投げ入れながらそう呟いた。さっきラーメンを大量に平らげたのが嘘みたいだなあ。ほんとに、よく食べる。

……遺伝子ってこわい。おだんご頭の可愛い友人を思い浮かべて苦笑いを浮かべた。




「未来はホラー系平気なんだネ。」

『あー、うん、まあまあ。』
「怖くてオレに抱きつくーとかそういう展開には」

『なりません。』




なーんだ、つまんないのー。そう言いながらも別段機嫌の良さそうな神威を横目に街中を歩く。あれ、これってもしかして端から見たらカップルなんじゃないかな。

そう考えても別に赤面するわけでも緊張するわけでもない。我ながら可愛くない女だ、と自分で自覚はしているのだけど。




「次、どこいく?」

『んー、』

「…っと、その前に、お客さんみたいだネー。」




立ち止まって後ろを振り返る神威。ああ、あたしも少し気にはなっていたんだけどやっぱりあたし達のこと(正しくは神威のこと)を着けていたらしい。

いかにも不良です、って感じの少しゴツい奴らがぞろぞろと集まってきて、神威を睨み付けている。




「んー、せっかく楽しいデートだったからジャマされたくなかったんだけどなあ。」

『いや別にデートじゃないでしょう…そして邪魔してくれてありがとうございます。』

「えー」




キッパリと神威に言い放った後に不良さんたちに笑顔でお礼を述べる。横から避難の声をあびたけどシャットアウト。じろじろとあたしに視線を向けてくる不良さんたち。




『あ、あたしは喧嘩する気はないっていうか…出来ないのでどうぞお好きにしてくださいね!』




言って少し離れたところに行き、完全に傍観体制に入る。神威がにやりと口元を緩ませては、あたしに未来最高、と呟いてから拳をあげて相手に向かった。

一斉に大人数で神威に襲い掛かる。そんなのにも全く物怖じせず、むしろ楽しそうにケンカをはじめた。



(…やっぱり神楽以上に強いんだなあ、遺伝子ってすごい。)



呑気にそんなことを考えてポケットからあめ玉を一つ取り出すと口へ運ぶ。




「っ、くそ!あの女を人質にしてやる!」




口に含んだあめ玉をがり、と噛み砕いた瞬間、こちらに猛スピードで走ってきながらも勝気に笑う男が視界に入った。

そしてその後ろには柄にもなく少しだけだけど焦った様子のみつあみ頭が目に入って。

神威もあんな表情できるんだなあ、なんてぼんやり考えていたら目の前にはさっきの男。あたしの腹部に向かって直進してくる大きな拳。




―パシ




あたしはそれを片手で軽く受け流す。それによってよろついた相手の溝内に膝を振り上げて一発。




―ドス、




気絶してその場に倒れ込んだ相手を見てため息をひとつ。




『…………あ、』




唖然とこちらを見る不良たちと神威の視線に我にかえってははたいていた手を止める。

さっきとっさに手を離した鞄を手に持ち直してスカートのヒダを直して頭をさげながら言う。




『え、っと、どうぞ続けてください失礼しました神威また明日!』




一息にそう言ってから背中にささる大量の視線を振り払って走ってその場を去った。


こんな予定じゃなかったのに…!












(一番バレたくない相手にバレてしまった…!)












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