NOVEL-銀魂- 温泉旅行<48000キリリク> かぶき町を揺るがす四天王の争いを経て、ようやく夜が賑わい出した。 次郎長が平子とかぶき町を去って1週間。年齢にしては驚異的な早さで回復を果たしたお登勢が退院となった。しばらくはスナックお登勢も休業することとなり、自宅療養していたが、来週から店を開こうかという頃。上の住人たちからお誘いをうけた。 「バーさん、温泉行くぞ」 山道をバスで揺られて温泉地にたどり着く。万事屋が予約した旅館は、そこから徒歩15分の所だ。 「ぱっつぁん、こっちで道合ってるんだろうなー?」 「銀ちゃん、あれアルよ!」 「あんなに高そうな所な訳ないだろ、もう少し先のはずだよ。ここから一本道だから迷わないですよ」 立派な門構えの建物やら、何階建てなのか数えたくなるような建物やら、目を引く旅館がならんでいる。川に沿って緩やかな坂道を登って行くと、目的の旅館が見えた。 「銀さん、見えましたよ。あの旅館です」 新八の声に最後尾を歩いていたお登勢も顔を上げた。 「へ〜なかなか良さそうなとこじゃないか」 「思ったより歩きましたね。お登勢さん、病み上がりなのにすみません」 眉を下げて笑う少年に、構わないさ、と笑みを返す。前を歩く2人と比べ物にならないくらい礼儀の良い彼には、お登勢もつい可愛がってしまう。少し足にきていたが、立ち仕事を再開するためのリハビリだと思うことにする。 万事屋で予約した宿の前に着くと、その宿の歴史を表すようなしっかりとした木製の門が出迎えた。駐車場と剪定された小さな庭を抜けて宿に入った。 銀時にチェックインを任せて、荷物とともに少し離れた所で待つ。 いい大人が少女とギャイギャイ騒ぎながらチェックインの手続きをしている姿に、呆れながら見ていると、 「銀さん、実は頑張って働いてたんですよ」 ふいに隣の少年がもらした。自然と声の方へ顔を向ければ、広い背中を見て小さく笑っている。 「お登勢さんを温泉に連れていってあげようって、僕と神楽ちゃんが言った時は散々文句言ってたのに。僕らに隠れて1人で仕事こなしたり」 丸い真っ直ぐな眼がお登勢を見る。 「銀さんなりの親孝行だと思うんです。って、お登勢さんのことだから、僕が余計なこと言わなくても分かってますよね」 照れ臭そうに笑う新八。嬉しそうにはしゃぐ神楽。めんどくさそうにしつつもどこか楽しそうな銀時。 温かな風が通り抜けたような気がした。 私にはこんなにハチャメチャな家族がいるみたいだよ。辰五郎、あんたがいない間に悪いねぇ。大丈夫、あんたのことも大切に思ってくれるやつらさ。 部屋に案内されて各々足を伸ばす。銀時は窓辺の椅子に座り外を眺め、新八は荷物を片付けた後お茶を煎れ、神楽はあちこち部屋のなかを見て回っている。 お登勢は部屋の中央のテーブルに着き座椅子へ腰掛けた。落ち着いたところで新八のお茶に口をつける。 すっかり家族だねぇ、とぼんやり思う。 辰五郎、私はこっちで楽しくやっているよ。そっちでいい女を見繕ってるかもしれないけど、私がそっちに行くときにはちゃんと迎えに来ておくれよ。 物思いに耽っている間に温泉に行くことになったらしい。 「おいバーさん、おいてくアルよ!」 「神楽ちゃん、バスタオル忘れてるよ。銀さんも行きますよー」 「へいへい」 「バーさん聞こえてるアルか?死んでるアルか!?」 騒がしい声に重い腰を上げる。 「あんまり老人を急かすもんじゃないよ。今行くから」 四人連れだって部屋を出た後、銀時が開けっ放しにした窓から風にのって一枚の楓が落ちた。 fin. あとがき コメ長様、大変大変お待たせいたしました。 リクエスト頂いた中から銀魂で「銀新で万事屋でお登勢一家!」でした。 銀新要素入れられてる...? 無茶な設定ではありつつも自分では気に入ってます(笑) リクエストありがとうございました。 [*前へ] |