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NOVEL-銀魂-
橙色の金平糖(銀誕小話)
ときどき、ぎしっという音を鳴らしながら、青い袴と白い着流しが廊下を歩く。
「すみません、わざわざ来てもらっちゃって」
「あー?別にかまわねーよ」
先日、新八は父親の持ち物を整理していたのだが、どうしも自分の身長では届かないところの荷物が片付かなく。銀時に家に来てもらったのだ。
今日も今日とて依頼のない万事屋の社長は他に予定もないからと、トレードマークの銀髪の天然パーマを風に揺らしながら、恒道館にやってきた。
玄関から渡り廊下を抜け、新八の父親の部屋が見えてきた頃、銀時がふいに足をとめた。
「銀さん?どうかしたんですか?」
「いや、甘い匂いがするなぁと思って」
新八も同じように、銀時の言う匂いをたどってみる。
「あぁ、お隣の金木犀ですね。もうそんな季節なんですね。銀さん、金木犀好きなんですか?」
新八の声にも返事をせず、どこか遠くを見つめている銀時。
「・・・一応言っておきますが、いくら甘い匂いでも、食べられませんよ?」
「あー」
新八の冗談交じりの忠告にも、生返事で答えるだけだった。

この甘い匂いで思い出すのは、昔の攘夷時代。
それは、銀時と桂が天人を撒くために、仲間と別ルートでアジトに戻るときだった。
大きな屋敷の庭を横切ったとき、その香りが二人の鼻をかすめた。それは庭のど真ん中に主のように構え、むせかえるような甘い香りを放っていた。
その木に惹きこまれるように、銀時は魅入った。
「ヅラァ、これなんてんだ?」
「ヅラじゃない、桂だ!これは金木犀だな。こんな立派なものは珍しいな」
包みこまれるような甘い香り。先に落ちた小さな花たちは、金平糖のように見えた。
「俺、この花すきかも」
「…言っておくが、食えないぞ。それよりもこの匂いが付いたらアジトがバレてしまう。さっさと行くぞ」
「あ、今いーこと思いついちった。俺の誕生日、糖の日にするとかどーよ?俺甘いもの好きだし」
戯言には耳も貸さないとでもいうように、桂は先にアジトに向かっていった。
1人残された銀時は、手土産にしようとその大きな木から一枝拝借した。手の中の甘さに満足げに歩きだした。しかし、庭を出たところで踵を返し、その枝を他の木々に埋めるように挿して、走り出した。血を纏ういまの銀時にとって、その香りはあまりに甘すぎた。

「銀さん、おはようございます」
懐かしい夢に、いつもの慣れ親しんだ声が入ってくると、そのまま寝室の障子戸と窓が開けられた。
朝晩が冷えてきた、とはいえ、銀時が起こされるのはそれほど早い時間ではないのだが。それでも気持ち、冷たい風が、温まった布団の中に侵入してくる。
「んーー・・・もう少し、あと5分」
「何言ってるんですか。今日は銀さんの誕生日なんだから、早く起きてください」
少年の言葉に、そーいえばそうだっけ?と考えていたら、眠気も遠のいていった。
誕生日くらいゆっくり寝かせろよ、とぶつぶつ言いながら寝巻の甚平姿のまま、のそっと居間に行く。
「ん?なんか甘い匂いがする」
「あ、起きました?おはようございます」
すでに台所に向かっていると思っていた新八が、何やら銀時の机の上に飾っている。
「新八。それ、どうしたの」
「お隣さんから貰ってきました。銀さん欲しそうにしてたから」
にっこり笑う新八の手元を良く見ると、それはオレンジ色の小さな花を纏った、金木犀だった。
「神楽ちゃん起こしてきます。朝ごはんの前に、顔洗ってきてくださいね」
小さな背中を見送り、ふたたび机の上の金木犀を眺める。徐々にその香りを放ちながら、それは朝の光を浴びて、キラキラと輝いて見えた。



fin.


*あとがき*
で?っていうツッコミはなしの方向で(笑)
結局、銀さんのこと祝えてないじゃん。と気づいたのはすべて書き終わってのことでしたチャンチャン
銀新でもないし、なんだこれ。
金木犀は銀さんの花だ、と思った衝動のみで書いた話でした
銀さんがいまの平和で幸せな日々を感じられていたらなぁということで




















これじゃああれなので、おまけのこどもたち


「ほら、神楽ちゃんも起きて!」
「んー・・・」
「銀さんにおめでとう言うんでしょ?」
「あー!そうアル!なんで先に起こさないアルかぁ!?」
「起こしたけど起きなかったんだろう。僕もまだ言ってないからさ」
「マジでか!じゃあさっそく行くアルよ。ぱっつぁん!」
「ちょ…、神楽ちゃん、引っ張らないでよ」
「銀ちゃん!銀ちゃーん!!いいアルか、ぱっつぁん?せーのぉ・・・」
『銀さん(ちゃん)、誕生日おめでとう(アル)!!!』


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あきゅろす。
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