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NOVEL -ONE PIECE-
ひかり(パラレル)<サン→ウソ>
全てが眩しかった



「暑…」


サンジは寂れた無人駅に降りたった


明日、祖母の七回忌があるため、電車で二時間以上かけてこの山しかないような片田舎にやってきたところだ


山の中なら暑さも和らぐと思っていたが、温暖化の今、そう甘くはないようだ


むしろ見晴らしが良いぶん、遮るものがなくて日光が直接ジリジリと降り注ぎ、蝉の音が余計に暑さを駆り立てる


「あつ…」


その言葉しか出てこない


駅を出て立ち止まり、久しぶりに行く祖母の家までの道を頭で描く


その頭半分で考えるのは、密かに会うのを楽しみにしていた2つ下の従兄弟


眼がくりくりして可愛かったあいつは、どう成長しているだろうか


「サンジくーーん!」


その時、右手の道から頭に浮かんでいた人物が、手を振りながら自転車でこちらに向かって来る


何年かぶりに見た従兄弟のウソップは、少し身長が伸びたようだが、脳天気な笑顔とオーバーな動きは変わっていないようだ


「久しぶりだな、サンジくん!良かった、すれ違わなくて」

「おォ!ちょうど今着いたとこだ。迎えに来てくれたのか?」

「うん、サンジくんこっち来るの久しぶりだから道忘れてると思って。部活終わってすっ飛ばして来たんだ!」


そう言うウソップが着ている夏用の制服はまだ真新しく、白さが目立つ


そういえば今年、高校生になったんだっけとその制服姿を見ながら思った


ウソップは自転車を降りてサンジと一緒に歩き出す


「あれ、ゼフ叔父さんは一緒じゃないのか?」

「店を閉めてから終電で来るってよ。俺はいても邪魔だって追い出されて先に来た」

「相変わらずサンジくんには厳しいのな。俺には優しいのに」


にこにこと笑いながら話すその声も、前に会ったときの高いものとは違ってすっかり声変わりし、耳あたりの良いテノールになっている


時は流れているとわかってはいても、あらためてその成長を感じる


そのことに、サンジの心は嬉しさと、少し遅れて寂しさを感じた


これほど成長する間、全く会っていないのだ


こいつのなかで自分はどれだけの位置を占めてるのだろうか



「ウソップ、後ろに乗せろ」

「え!?」


ウソップの返事を聞かずに勝手にウソップが引く自転車に乗っかる


「ちょ…、サンジくん、俺がどんだけ非力だと」

「俺は長旅で疲れてるんだ」


有無を言わせないサンジの態度に、仕方なくウソップも自転車に乗る


「命の保証はないぞぉ!?」

「こんな田舎道に車なんか来ねぇよ」


一応脅しのつもりなのか、そう言ってきたウソップの言葉をあっさり切り捨てると、諦めたのか左右にグラグラしながら出発


「あぶね!おら、しっかり漕げ!!」

「だっ、から!いの、…ちの保証はっ、ねぇ!って言っ…、たろぉ〜、が!!」


その言葉を言い終える頃にはなんとか態勢が整い、フラフラしながらもスピードに乗ってくる


暑さは容赦なく襲うが、山から吹く風は涼しくて爽やかな気分になる


その風で、サンジは感じ始めた切なさをはらう


この想いは捨てたはずだ
良い兄貴代わりになろうと決めたのだ


今更切なく思うのは間違っている


きっと久しぶりの田舎が懐かしいだけだ
懐かしさと切なさを勘違いしただけだ


そう自分に言いきかせた


「本当に山と畑しかないな」

「わゎサンジくんっ、動くなって!」


全てが眩しかった


澄み切った空も
山の緑も
目の前の白いシャツも


もう少ししたら
このひかりに慣れたら、良い兄貴代わりになれると思うから


だから、なるべくゆっくり漕いでくれよ


着く頃には、笑って言えるはずだから


「その制服似合うな」って



fin.


配布元:xxxーtitles
封じた想いで10のお題




*あとがき*

初パラレルでした〜!
書いてて楽しかったです♪

でもなかなかまとまらなくて大変でした(^_^;)
てか結局まとまってない気がするんですが…

なんだかごめんなさい。。。

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