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その他
がんじがらめの、やくそく






「ねぇ、刹那君っていつもフォークかスプーンで食べるよね?」

昼休み、いつものように食堂で3人、食事を囲む。

「そういえばそうね」

沙慈のガールフレンドのルイスが彼に相槌を打つ。

「あんた、お箸使わないの?それとも使えないとか?」

まさかね、とルイスはフライドポテトを口に運ぶ。

「ああ」

「えーっ!?ちょっと、ほんとにお箸使えないの?あんた生まれも育ちも日本じゃなかったっけ?お箸使えないって…幼稚園児でもありえない!」

ルイスは食事を中断して身を乗り出し、向かいの刹那に詰問し始める。
それを沙慈が言いすぎだよルイス、となだめる。

「ごめんね、刹那君。君を貶すために質問したわけじゃないんだ。ほらルイス、もうこの話はなかったことにしよう」

「構わない。昔も同じことを聞かれたことがある」

特に傷ついた様子を見せるでもなく刹那は黙々と食事を続ける。
しかし刹那の脳裏には過去の約束が浮かび上がった。


**********



「二ール」

「ん?どうした刹那?」

ソファーで本を読んでいた二ールはしおりをはさみ、刹那の目線に合わせるようにしゃがみこむ。

「おはし…どうやってつかう?」

「お箸が使えるようになりたいのか?」

こく、と刹那は頷く。

「別にフォークとスプーンでいいじゃないか?お箸は使うの難しいぞ?」

よいしょ、と二ールは刹那を抱き上げ、自分の膝の上に座らせる。

「きょう、いわれた」

「何を?」

「おはし、つかわないのへん、て」

「誰に?」

「ともだち」

「そっかー。刹那は俺と友達、どっちが大切?」

「…?二―ルにきまってる」

二ールの言いたいことがよくわからない刹那はキョトリと目を丸くさせながら、それでも答える。
いつだって刹那の一番は二ールなのに、二ールはそれが分からないのだろうか、と。

「俺もだよ。俺も刹那が一番大切。他のものなんていらない、そうだろ?」

今日の二ールは自分の分からないことばかり言う。
それでも二ールの言うことは絶対だと、首を縦に振る。

「ならいいじゃねぇか。刹那はどうしてもお箸使えるようになりたい?」

するりと二―ルは刹那のほほを手で包む。

「…つかえない、はずかしい…?」

「どうだろうな?…でも、どうしても刹那がお箸使えるようになりたいなら、教えてあげる」

親指で二―ルが刹那の目尻を弄ぶ。

「そのかわり、俺はいなくなるけどな」

指の動きを止め、二―ルは何ということもないといった風に言葉を吐きだした。

「いやだ!二―ル、いなくなる?おれは、ひとり?」

この世の終わりだとでも言いたげに刹那の顔は一瞬にして絶望に染まる。

「だって刹那、俺には刹那が必要なんだ。でも、刹那が要らないって言うんなら、俺は必要ないんだよ」

仕方ないんだと二ールは悲しげに顔を歪めた。

「いるっ、二―ルいる!」

何処にも行かせないんだとでも言わんばかりに二ールの広い背中に縋りつく。

「うん、刹那がそう言うんなら、俺はずっと刹那のそばにいるよ。約束だ」

言って、いつものように優しい頬笑みを浮かべる二―ル。
それにつられて刹那もほっと息をついた。
すっと差し出された小指に、真似をして、頼りなさげな小指が絡む。

「やくそく」


指切りげんまん、ゆびきった――




「お箸が使えるようになったら、二ールは居なくなってしまうんだ。だから、使えなくていい。」

幸せそうに刹那は言った。












もっともっと甘やかしてあげるよ
気が付いたら戻れないくらい依存させてあげる
それでいい





がんじがらめの、
     やくそく



*あとがき*
どうしてこうなったw
ニールを病ませるつもりはなかったの、に…




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あきゅろす。
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