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BLEACH
第一章 弐




雨でお洋服が濡れていくのはわかっていました。
あとで屋敷の者に小言を言われるのもわかっていました。
それでもお屋敷の中にはいたくありませんでした。
雨のしずくにうたれながら。
透明なしずくと。
まっかな薔薇の花びらが。
ひとつになるのを眺めていました。




お庭に出てから大分たったころ。
寒さを感じ始めた私の上から。
低くて。
けれど優しくて。
どこかあたたかくて。
なつかしいような音が。
ふってきました。

「ルキアお嬢様。」

そう一言放ってから。
その人の手は、私の肩にそっと触れました。

私は本当にびっくりしました。
だって、ここには誰も来るはずがないと思っていたから。
けれど、その人の声は優しくて。
びっくりしたけれど、もういちどその人の声が聴きたくて。
その人の顔が見たくて。
ゆっくりと後に振り返りました。






綺麗、でした。


その人の髪は鮮やかな橙で。
その人の瞳は吸い込まれるような茶色で。
その人の眼差しはお父さまのように優しくて。
その人のからだは大きくて、しっかりとしていて。
その人のお名前が知りたくて。
私は少し小さな声で尋ねました。
屋敷の者達に見つからないためにも。
その人のお名前を私だけの宝物にするためにも。

「あなたのおなまえは?」

返事はすぐに返ってきました。
その人の声は低くて。
けれど優しくて。
どこかあたたかくて。
そしてなつかしい。

「黒崎一護と申します。昨日からここで働かせていただいております。」

「苺……」

男の方にしては随分と可愛らしいお名前だと思い、その人の名を呟くと。
その人は少し困った顔をして、こう言いました。

「違います、お嬢様。“苺”ではなくて“一護”です。一等賞の“一”に守護神の“護”です。」

“一護”

素敵だと思いました。
私はそのお名前の響きが好きになりました。

「一護……」

ふいに呼んでみたくなり、口からこぼれでてしまっただけなのに。

「はい、何でしょう?お嬢様。」

優しく答えてくれたその人。
返事を返されるとは思ってもみなかったことだから。
少し戸惑って。
ほほが熱くなるのを感じながら。
苦し紛れに尋ねました。

「………えと……あ…の…“一護”と呼んでもいいかしら?」

その人は優しく微笑んで。

「はい。」

と。
答えてくれました。


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