融点に触れた手 触れられない 「外は嫌がったもんな?ヤルならベッドが良いか」 服を剥がされる恐怖に、受け入れていた頃を匂わせる言葉。 形振り構わず逃げ出そうと動かした手足は上から押さえ付けられる。 「出水、こっち向けよ」 興奮した荒い息を掛けられて強張った身体は脳からの指令を待ち続ける。 唯、体格ではやや劣る自分にいつどの隙を衝くか考えている余裕は無く。 薬と暴力で弱った身体だからこそ、周防が望んだからこそ、奪えていた主導権は今は形無しだった。 「それとも目隠しするか?お前可愛い反応するよな」 このまま拘束されてまた身体を拓かれて、また飽きられて。 また失う。 失う。 「なあ、いず…」 「五月蝿い」 急にせり上がった来た涙と吐き気は収まる事を知らない。 自分を見詰める男の髪を引っ張って、横に投げ出せば感情が高ぶった自分はもう破壊衝動でしか自分を癒せなかった。 目に付く物手当たり次第に周防へ投げる。 「五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い!」 もうお前に犯されていられない。 もう繰り返したくない。 クッションもグラスも本も、ベッドに散らばって。まともに投げられないせいで周防に当たったのは大した事が無くても、呆然とした表情に罪悪感が生まれる。 「おい」 それでも差し伸ばされた手を払って、自分の小さな自尊心を守る為に虚勢を張る。 「俺を犯して別れるか、犯されて関係を続けるかお前が選べ」 揺れた瞳に背を向ける。 [前へ] [戻る] |