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浸食された思考


相手にとって自分が初めてだと言うのは優越感を齎(もたら)すもので、仕事に打ち込む横顔を見る時間が以前より多くなった。

自分の生活圏に入れて、唯隣りで寝ていただけだとしても。同期ですら家に呼んだ事がない中、粘膜に触れた事実と自分を好きだと言う感情には情のようなものも抱きつつあった。



「三宅」

更衣室で一人着替えていた男に近付くとその名を呼ぶ。ここ最近で随分舌に馴染んだ名は何も考えなくても滑るように出て来る。

「沢木さん、お疲れ様です」

シャツから頭を出して髪を軽く整えた三宅はすっと肌を隠して、一瞬だけ見えた引き締まった腹に腰の辺りがチリチリと燻(くすぶ)る。
随分、思考が侵食されて来ている。
見た所で何が有る訳でもないと言うのに隠れた部分に興味が湧く。

「お疲れ」

気にしても仕方が無いと自分も手早く着替えようとロッカーを開ける。
三宅は俺の帰りを待つつもりなのか椅子に腰掛けて雑誌を開いた。

「沢木さん今度買い物に行きませんか?」
「良いけど、何か欲しい物でもあんのか」
「ええ沢木さんとお揃いで少し」

ざっくりと開いたシャツからは鎖骨と軽く胸元が伺える。話しながらも三宅は楽しそうに色々見ていて、何となく視線が素肌に行ってしまう。

「この型の──…沢木さん?」

吸い寄せられるように腕を前に伸ばして、隙間から手を伸ばし入れる。
驚いた様子の三宅が伺って来ても滑らかな感触に意識が集中して、無言で返した。



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あきゅろす。
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