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愛暴の勧め
07


「お前は馬鹿か」

首元を掴まれているから喋ろうとすると誤って唾液が気管に入る。
盛大に咳き込むと手が緩んで腰を折る。座り込む前に壁に押し付けられて頭を打った。
白い壁はコンクリート素材で、痛みは鈍くやって来る。

「な、に」
「愛想振り撒いてんじゃねえよ」
「…誰にだよ」

くらくらして上手く頭が働かない。視界がぼやけて額を押さえる。

「あいつらが退学になったって、次は幾らでもいる。毎回面倒見るつもりか」

肩をぐっと押されて筋に痛みが走る。

「姫路、痛い」

「ろくに抵抗も出来ねえ癖に」

影が掛かった。
空いた手で顔を上げさせられて重なる。
噛み付くように口を塞がれて、身体がびくっと跳ねる。

「…っ」

薄く開いた唇の隙間から舌が入り込んで来た。
ぬるっとした感覚は官能に火を点けるもので、痛みと綯い交ぜになって涙が滲んで行く。

指が耳の後ろを撫でて擽(くすぐ)るような動きを繰り返す。
力が抜けてずり落ちそうになる身体を足で支えられる。

「はっ…、…ひめ、じ」
「…なあ上島」

唇が離れる瞬間の唾液が伝う感覚にぞわりと熱が溜まる。


「お前、男いけるだろ」


濡れた黒曜石のような瞳に射抜かれて、息が詰まる。
姫路を見ていると胸がざわついて違うと言い切れない気がして怖い。

「離せ…よ」

足の間に居る身体を抜けて行こうとしても腕が絡んで道を塞がれる。

「落ちる。暴れんな」
「良い」
「授業には帰してやるよ」
「飯、まだだし」

顔を合わせられなくて俯いていると、階段下から話し声が上がって来た。
離れたと思ったら連れ出されるようにその場を後にする事になった。



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