愛暴の勧め
02
「お前は何も悪い事してねぇから心配すんな」
ぽん、と帽子の上から頭を触られてちょっと驚く。
姫路でもそういう事言えんのか。
「さっさと行くぞ」
背を向ける姫路に追い付いて隣りに並ぶと道行く人からやたら視線を感じた。
姫路の容姿もあるけど校内放送の興味半分だ。
「こんにちは」
正門まで辿り着くとそこには白衣を着た青年が本を片手に立っていた。
「あれ?三嶌先生だけですか?」
「ああすみません。言ってなかったですね。委員会と言っておけば怪しまれずに済むと思ったので利用させて頂きました」
「ああ、成る程」
「取り敢えず此処では何なので、お二人には私個人が任されている庭園にご招待しましょう。堅苦しい話ではないので気楽にして下さいね」
物腰の柔らかな三嶌先生はそう言うとエスコートするかのように道を示してくれる。
正門から出て少し西に進んだ所にその庭園は見えた。
曲線を描く自然色のタイルに色とりどりの花が植えられ、中央にはどこかの芸術作品なのか素人作りとは思えない噴水が置かれている。
そこから広がるように水路が作られ、水が引けるようになっている。周囲が森林の事もあって隠された庭園は優美なものだった。
「綺麗ですね」
「ええ。授業担当がない日は手入れに来るのですが中々の仕事でして」
「これ全部一人でやられてるんですか?」
「たまに弟も手伝ってくれますよ。理事長が見に来るとなればやらない訳には行きませんからね」
そう言って微笑む三嶌先生に促されてアンティーク調のベンチに腰掛ける。
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