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ドレミうた
きゅう


「知ってるのよ。洋二は男だって構わず抱けるの位」
「……え?」
「いつだかニューハーフの男の家に泊まってキスマークだって付けて来たんだから」
「…え?え?」
「好き嫌いはっきりしてるし、男を可愛いなんて褒めるのは絶対にあんたを好きなのよ!すっごく楽しそうに遊んだ内容話してたわ。これはヤバいと思って呼び出したのよ」

志保様は饒舌に俺の知らない飯塚の顔を話して下さって、冷や汗が半端じゃないんですけど。

「…え?飯塚って男いけるの?」

うっかりタメ口聞く位には動揺中な俺。

「何食いついてるのよ」
「知らなかったな、と」
「ふん、あんたがノーマルなら良いのよ。昔から変わらず顔が整ってるのはムカつくけど」
「…そう言えばよく俺の事知ってますね」
「有名だったじゃない。べったべたな兄弟で。ファンクラブもあったし」
「え?」
「私も入ってたし」

さっきから俺の知らない事実ばかり聞かされて休む間もなく驚いてる気がする。
まさかあの中学を取り仕切っていた女王様が俺達兄弟のファンクラブ?に入ってたとか。
夢か。夢なら早く覚めてくれ。

「兎に角。洋二は私と付き合ってるの。あいつは素っ気ないしあんまり好きとか言ってくれないし、でも私と一緒に居てくれるんだから。…だから、取らないで」

真剣な表情からキッと睨まれる。
女王様らしい表情なんだけど、そこには女の子らしい感情が詰まっていて。

「……あー」

飯塚って愛されてんだなぁって笑いが漏れた。

「何笑ってんのよ」
「いや、可愛いんだね志保様」
「やっやめてよね!」
「恋してますなぁ。うんうん。ニューハーフってのはよく分からないけど、飯塚が俺を好きとか多分違うよ」
「何でそう言えるの?」
「どうせ可愛いって実の事でしょ。うちの弟本当に可愛いから」

今写真持ってないのが残念。最近特に可愛く感じて仕方ないんだよな。
昔はそんなに思わなかったのに。

「飯塚が男も好きになれたとしても。飯塚は志保様大好きだよ。遊んだ時に聞いたんだ。好きじゃなかったら付き合ってないって」
「……っ…」
「彼女に疑われたら寂しいよ」

運ばれて来たオレンジジュースをくるくる掻き回して一口飲む。氷の位置がずれてカランと鳴るのに涼しさを感じていると、顔を真っ赤にした志保様が立ち上がって影を作った。

「代金!」
「あ、はい」
「私もう行く。呼び出して悪かったわね。洋二とちゃんと話し合うわ」
「はい」

飲まれる事も無く放置されたコーヒー代を受け取ると、どうするか迷って一緒に店を出る。

「夜道は危ないから、飯塚呼ぶかタクシーが良いんじゃない?」
「余計なお世話よ」
「すみません」
「それじゃあ。またね」

そう言って背中を見せる志保様を見て、またねって言葉にあれ?と振り返る俺でした。



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あきゅろす。
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