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ドレミうた
なな


「帰り際にね。まだ帰りたくないって言われるのが男心をくすぐるって記事を読んだから。にぃちゃんも…なるかなって」

「え、あ」
「でもあんまだったから、おれどうしようって」

小さく音を紡ぎながら離れて行く唇に視線を縫い付けられる。


「にぃちゃんは。どんな風にされたらドキドキする?」


多分いつも通りの幼さが抜けない顔で必死に語り掛けてくれてるんだと思うんだけど、声だけだと。

妙に緊張して。


「俺は、今、もうやばい…んだけど」

実に顔を近付けられるだけでちゅーされるんじゃないかって目を閉じて。
受け入れてる時点で駄目なのに。たまに何でもない時でも自分からちゅーしたくなる。

「え、あ、ドキドキ…してるの?」
「まあ端的に言えば」
「にぃちゃんっ」

例えば、今。

嬉しいって全身で表現してる実をもっと喜ばせたくて。
肩に顔を埋める実を離して、勢いの侭に唇を重ね合わせる。

「んっ…ぅっ」

ぴくん、と揺れた身体に満足してもっと深く隙間無く合わせたくて。軽く吸い付いて息をしてまた角度を変えて合わせる。

どうしよう、気持ち良い。

もっと。もっと触ってたい。

「にぃちゃ…っぁ…」

後ろ髪に指を差し入れて引き寄せるように上を向かせて、合わせがずれて軽く唾液が滲むのに興奮して。
柔らかい感触もみのの上擦った声も、全部が歯止めを忘れさせた。




「ワン!ワンワンワン!」
「…っ…」
「あ」
「悪い、俺。今、何して…っ」

犬の散歩なんだろう。遠くから中型犬に吠えられて乙樹は口元を抑えて実から離れる。

「まっ待って!」
「みの」
「にぃちゃん、おれ、にぃちゃんが好き」
「うん…」
「好きだからいっぱいされて嬉しかった」

すっと首に腕を回されて、正面から向かい合う。
電灯の僅かな明かりで見えた実はやっぱり涙目で顔を赤くしていて。

「にぃちゃんが好き」

もう何回も聞いてる台詞なのに、それはいつもと何だか違う気がした。




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