[通常モード] [URL送信]

巻戻の僕
10.
「ザックスはなんであんなところにいたの?」
「仕事の途中だったんだ」
「仕事?」
「そ。俺、神羅で働いてるんだ」
「どうして?危ないんじゃないの?」
目を丸くして尋ねるクラウドに、ザックスは前を向いて微笑む。
「確かにそうだけど、俺には夢があるから。その為に今ここにいる」
「ザックスの夢?聞いてみたいな」
「笑うなよ?それは……、英雄になること!」
少し間を開けて言うザックスは、どこか照れているのか頬に指を滑らせている。
「ふぅん。じゃあ、忙しくてもう会えなくなっちゃうかもね」
「え!?それは嫌!絶対会いに来る!」
「いいよ、そこまでしなくても………。あ、ねえ?だったら、俺が会いに行くよ」
「へ?」
冗談なのか本気なのか、ザックスの驚き様を笑うクラウドは楽しそうだった。
「神羅は14歳から入社出来るんでしょう?僕も入社する」
「そう、だけど。本当にいいのか?」
「うん。だから待ってて」
迷わず歩くクラウドにザックスはくすりと笑うと、「待ってる」と呟いた。


「ザックス!どこにいた!?」
「アンジール?あー、そこらへんかな」
「お前なあ………」
無事ニブルヘイムに到着した俺とクラウド。
村に入って早々、村人や神羅の面子に騒がれ囲まれた。
このままではクラウドと逸れてしまう。そう思った俺はクラウドの手を握ろうとしたその時。
「さよなら、ザックス」
微かなクラウドの、寂しそうな声が聞こえた気がした。
急いで辺りを見回すものの、あの特徴のあるハニーブロンドの子は、忽然と消え失せていた。
「クラウド……」
名前を囁いても、まるで初めから存在していなかったかのような錯覚さえ覚える。
俺は隠れて鼻を啜った。


明かりから離れた樹木の影が揺れた。そっと覗いたものは闇で隠れて見ることが出来ない。
「またね、未来の英雄さん」
まるで鈴が転がったかのような声。
楽しそうに独り言を吐くと、更なる闇に身を潜めた。

[*ーBack]

10/10ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!