joker 気になる子 「冬威うまい!!」 「…コツを掴めば簡単だな」 クレーンゲームで冬威は簡単にぬいぐるみを取った。 最初ゲームセンターに入った時不思議そうにして、初めて来たのを知りまず始めに教えたがすぐコツを掴み取っている。 (冬威って何でも出来るんだ…) 勉強も運動神経も…料理だって出来るし…器用なのかな…僕と逆だ。 「ほら来夢」 「可愛い!」 ぽすっと僕の手にぬいぐるみを置かれた。 ふわふわと抱き心地がいいから抱き枕決定だこれ! 「…」 「主人睨むな睨むな。」 「冬威ありがとう!!…あ、」 「ん?」 「らいむ?」 冬威を見ていたら後ろにいた子に目が奪われた。 黒くて長い髪…白い肌の女の子に。 「…」 「らいむ?」 「…」 「来夢?」 冬威達が話し掛け来るが頭に入らない。 ただ視線が逸らせなくて、さらりと流れる髪…嬉しそうに笑う顔。 「…」 「らーいむっ!」 「うわぁ」 ソウガにどんっと体当たりをされ、クレーンゲームにぶつかった。 ぼっーとしてたからだが体当たりなんて酷い。 「どうしたんだよ」 「え、あ…えっと…」 「ん?…ははーん。あの子に見惚れていたんだな」 「え、ちがっ」 「照れるな照れるな!」 「…あの制服女子校だな」 「あ、そうなんだ」 愛斗が僕とソウガが見ていた方を見て呟いた。 女子校だったなんて知らなかった。学校の制服には詳しくないから。 「そうなんだって…なんだらいむ好きなのか?」 「ち、違う!ただ…」 「ただ?」 「コンビニで…よく来る子だなって見てただけだよ」 「コンビニ…か…」 「そう、それだけ。それだけだよ。それだけなんだ!」 「すっげぇ言うならいむ」 「…」 「話し掛けてくればいいんじゃないか」 「えっ」 冬威の言葉に目をまるくする。 「話し掛けてくればいいだろ。気になるんだったら」 「別に…そんなんじゃないよ。ほら、冬威も愛斗も行くよ」 「……」 二人から視線を逸らさせるためぐいぐい押していく。 ソウガがにやにやして見てたから睨んでおいた。 「何で皆からかうのかな…」 (確かに少し少し気になるけど…) だからって…楽しそうにされるとな…。 「お先に失礼します……あ」 バイトが終わり着替えて、飛び出すと目の前にはあの子がいた。 買い物を終えたのか袋持って。 「あ、あの」 「はい?」 「…あ」 思わず声をかけてしまった。 黒い大きな瞳と目があった。 「…えっと夜道に一人は危ないよ?」 「そうでしょうか…?大丈夫だと思うのですが…」 「大丈夫じゃないと思うよ!女の子の一人夜道歩きは危ないよ!」 「…貴方は」 「え?」 「コンビニの店員さんですよね」 「え…あ、うん」 (覚えていてくれた…?) ふんわりと柔らかく優しく微笑み彼女は言った。 名前を覚えてくれたのと微笑みをくれた事で僕の心臓はドクンと脈を打つ。 「はい。」 「…あ、あの」 「…その確かに夜道は危険ですよね」 「あ、うん…」 「どうしましょう…家の者を呼ぶには携帯をおいてきてしまったようですし…」 「あ、あの…あの…」 「はい?」 大きな瞳がまた大きくなって僕を見据えた。 心臓がうるさい、うまく話せそうにないかもしれない。だけど… 「僕が…送ってあげようか」 「え…」 ここでチャンスを失いたくなかった。 「家まで。」 「…」 「あ、何もしないよ。ただ送るだけでえっと…怪しい奴じゃ…」 無言の彼女に疑われてるのかと焦り、慌てて弁解をするが更に怪しさに拍車をかけてる気がした。 どうすればいいか慌ててたらくすりと笑った声が聞こえ彼女を見た。 「別に怪しい方とか思ってません。ただ…そう言ってくれるなんて思ってなかったので驚いただけです。…あの名前はなんて言うんですか?」 「不神来夢…」 「来夢さんですか…私は撫子と言います。」 撫子はまたふわっと優しく微笑んだ。 「送ってくれますか来夢さん」 「は、はい…!」 またにっこり笑われ胸がドクンと脈を打つ。 隣でふんわりと笑う撫子さんに僕も自然と笑ってしまった。 (←)(→) [戻る] |