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joker
夜の学校F


「冬威…そんないきなり…っ…」

「…」


(こんな顔を…)

今まで見た事がなかったというか血を吸う時に顔など見た事がないというか吸う自体少ない。
見た事がない来夢の顔に思わずにやける。


「ふぇ…っ…う…」


(声を押し殺してるのか…)

手で口を押さえ声が出ないように必死だ。
そんな姿が可愛く見える。


(気持ちがいいなら快感に身を任せればいいだろ?)

人間など快感に弱い生き物なのに変わったやつだなコイツは。

(だが…)


「ふぁ」

「…」

「…冬威?」


口についた血を拭き払い、来夢の顔をじっーと見る。
頬はまだ赤く、息も整えている。


「お前案外可愛いな」

「えっ!?」

「可愛い…」

「冬威!?」


来夢にそのまま抱きつく。温かく、好きな体温かもしれないなコイツの温度は。


「あ、あの冬威…あ」

「…ッチ…」

「うわっ!」


扉を蹴破り入って来た連中に舌打ちをし来夢から離れた。
来夢は慌てて私に大丈夫かと視線を送る。


「そうだな来夢…十字架を外してくれないか」

「え?十字架?」

「死にたいのか?」

「あ、…うん…。逃げないでね」

「逃げるか」


(こんな面白い奴がいるなんてな…)

可愛い反応をするし、快感には負けたくない面白い奴から離れる…いや、離れれるなら離れたいが。


「…完全復活だな」


来夢に十字架を外して貰いにやりと口元を笑わせ連中を見る。
血を吸い、十字架を外された。

全盛期と変わらない魔力だ。


「冬威急ごうよ」

「…ッチ」


出来るならこのまま図書館に行き資料をとやりたいところだが来夢がいる。
今回は普通に去るのが一番だろう。


「捕まれ来夢。振り落とされないようにな」

「え…うわ…」


窓に足をかけ、私はそのまま空を飛ぶ。来夢を抱き抱えて。
空を飛んだのは久々で、学校が小さくなるのも愉快だった。

(簡単に逃げ切れたな…)

実はというと十字架を外さなくても逃げれたし、血だって吸わなくても。
だが日頃の来夢への恨みで血を吸い、空を飛べるくらいの魔力を久々に感じた。

(ストレス少しは発散出来たな…)

少しは…だが。
本当は資料を…


「綺麗」

「?」


捕まってる来夢がぼそり呟いた。
来夢の方へとむくと来夢は下に視線を向け目をキラキラ輝かせていた。


「とても綺麗だ!なんか夢みたいだよ冬威」

「そうか?」

「うん!」

「…そうか」


(変な人間だ…)

しばらく私達は夜空を飛び街を見下ろしていた。





「それにしても」

「ん?」

「収穫あったな…夜間学校について…また調べに行くか」

「え、また!?」


十字架をまたつけられ、家につき来夢に話す。
来夢はまた行くというと嫌な顔をした。
それもそうだろ今さっき酷い目にあったのだから。


「あぁ…また。近いうちにだ」

「…」

「私が探していたものがあるみたいだからな」

「…冬威が探しているものって…」

「…」


来夢の答えに私は答えなかった。
来夢も答えないのがわかると、困ったように笑い私に向き合った。


「そっか…また今度か。今度は手に入るといいね冬威の捜し物」

「あぁ」

「それにしても夜間学校ってなんだろうね…愛斗もいたし」

「愛斗いたのか?」

「うん、助けてくれたんだよ。…でも夜間学校にいる割りにはヴァンパイアの事知らなさそうだったけど」

「本当にか?」

「多分」

「…」


本当に愛斗は知らないのか。誤魔化したのじゃないか?

油断も出来ないなあいつらには…。


「明日お礼に何かあげようかな…なんかなかったかな〜」

「…飴ならあるぞ」

「じゃあそれあげよう!よし明日は学校だ!寝るか冬威!」

「…あぁ」


まぁ、いずれは全てわかるよな。




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あきゅろす。
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