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joker
帰り道A


夜空に君臨するのは月、月が綺麗に見えるほど暗く時間が遅いからか人通りは少く現にも僕ら以外は通りかからなかった。

(…何がなにやら…)


目の前に起きている事を冷静に分析してみる。
ソウガが槍投げ付けてきて冬威が助けてソウガは愛斗の命令か何か知らないけど冬威が目的で…


「…こういうのは考えても当たらないんだ」


物語を読む時最初の予想とは全く違うのがいつもだ。これもそういう事だろう。


「普通に二人を見て…あれ?」


(冬威あんなに速かったんだ…)

体育の時やる気なさそうに走っていたし、僕とそんなに足の速さ変わらないのかと思っていたけどソウガの槍さばきについて行けるという事はそれなりに速いんだよね?
僕なんか全く槍がどこにあるか見えないし。

(あれ?それだと…)

ソウガも…凄い…のかな?

昔から速かったけどあんなに?

……


「さすが愛斗の護衛!強いんだ!」



「…そんな訳ですませるのかお前の動きは」

「何が?」


冬威がソウガの槍を掴み動きを止める。


「速さだ。人間にしては速い…お前人間か?」

「…なんだその言い方は冬威。まるでお前が人間ではないみたいな言い方だな」

「……答えろお前は人間か?」

「そんなの俺がお前に聞きたいんだけど」

「っ…!」


頬に槍をかすり、頬から血が流れる。


「お前はただの人間か?」

「…私…俺はただの来夢のいとこだ」

「…そう言うのかお前は」

「…そう言うのかって本当だ」

「何で隠すのかわからないが…お前がそう隠すならば…」

「隠すなら何を…」

「ふえ?」


ソウガが話していた冬威から僕に視線を向けにやりと笑った。
その瞬間何やら嫌な予感が…


「…卑怯な人間が…」

「何でも言えよ冬威…」

「え…何が……!??」


(え、えー!?)

槍が僕に当たりそうで、先程なら頬にかすった程度だがこれは直撃で…
当たれば死ぬ…そう予感させた…

(し、死ぬ?)

そんなの絶対いやだ…何で、僕が…

頭でこんなに早く考えれたのかと感じるくらいに考える。体は動けないまま…、冬威は助けてはくれないだろう。
だって僕が死ねば自由だ…し…

(あ、)

当たる…そう感じ目を閉じた時影が走ってきたような気がした。
気味が悪い音と生暖かい液体が手にかかり、目をゆっくり開けば…


「と、冬威!?」

「…ッチ…この私が人間の盾をするなど…屈辱だ…」

「け、怪我…!」


膝をつき倒れこむ冬威に慌て駆け寄る。
先程手の平についた生暖かい液体はどうやら冬威の血のようで、彼の腕からの傷から道路を赤く血で染め上げている。


「…かなりの出血だな冬威」

「…庇うとわかっていて…か」


腕を押さえながら笑う冬威。血はとまらなそうでこのままだと…


「冬威死んじゃうんじゃ…」

「死ぬ?まさか…これくらいじゃなきゃ死なないだろ」

「!?」


「そ、ソウガ…」


ソウガは躊躇いもなく動けない冬威に懐から出したナイフで刺した。
刺さったナイフは突き抜けていて血がボタボタ落ち怖くて気持ち悪く吐きそうになるが、動かなくなった冬威が心配で近寄るが彼は全く動かない。


「と、冬威?」


その声と共にソウガはナイフから手を離し冬威は倒れた。血が海のように広がっていく。


「ねぇ…冬威?」

「起きないだろ」

「そ…うが…」

「心臓をひと付き…普通の人間なら死ぬだろ」


ソウガは槍を持ち上げ現場を片付けている。
冬威を殺しても何も感じないように見えた。


「な、何でソウガそんな事するの?やりすぎだよ…何で何で冬威を…」

「…血ついたな…」

「冬威何もしてないのに何で…!?」


ソウガが僕の方を向いたのでびくっと構える。
手には槍を持っていて倒れている冬威のように殺されるかと思ったからだ。


「記憶消さないとな」

「や、やだ…」

「おとなしくしろよらいむ。オレはお前殺すと怒られるだろ」

「やだ…」


(こんなソウガ…)

――知らない!

何で、何でいきなり…


「静かに…お、」

「…」

「え?」


怖くて涙が頬から零れ落ちていたその涙目でソウガの手を止めたひとを見る。


「迷いもなく刺すとは…慣れてるのかガキが…」

「へーやっぱり」


起き上がり胸を押さえて立ち上がるのは…


「と、冬威?」


「生きていたのか冬威。」


先程刺された冬威の姿だった。

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