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joker



「とーいただいま」

「……来夢」

「何?」

「なんだこれは?」

「え、プリン?」

「違うこの黒猫だ!」


冬威は僕の腕の中にいる黒猫に指を差す。
そんなに反応するなんて、もしかしたら冬威は黒猫が嫌いだったのかな…と思いながら猫をおろす。


「拾った」

「拾った?お前な…猫を飼えるくらい金余っていると」

「その分冬威が働けばいいよ」

「あぁ…なるほ…っておい貴様」

「うそだって」


撫でてタオルに包み込んでやる。
春とはいえまだ肌寒い季節…猫にとっても寒かったと思うから。


「その分何か削ればいいでしょ」

「…何かって…また電気代を…」

「冬威の食費」

「貴様の場合冗談に聞こえない」

「…酷いな…あ、それより」

「?」


買い物袋からごそごそとプリンを取出し彼に手を出すようにといいそこに置く。
置けば彼は物珍しいものをみたようにプリンをじろじろ見る。


「もらったからあげるよプリン」

「ぷりん?」

「あ、もしかして甘いもの嫌い?」


きょとんと目を見開く冬威に彼の性格から甘いものが好きじゃなかったのかと思い聞いてみる。
彼は首を横にふり


「嫌い…ではない」

「そっか…あ、スプーンいるよね。はい」

「…?」


冬威にスプーンを渡し、買ってきたたい焼きを口に運ぶ。
たい焼き屋さんでバイトして数ヶ月…最初はそんなに好きじゃなかったけど今ではとても好きな食べ物になっている。


「たい焼きたい焼き…今日はキスしてから…冬威?何プリン見つめてるの?」


開けようとせずプリンと見つめ会っている冬威。
その光景はあわず、変な光景に見える。


「…」

「?いらないの?」

「…」

「いらないんだったら僕が」

「あ」

「…いるの?」


プリンを奪ったら彼は残念そうな表情をした。
いるかと聞いた彼は考え込み頷く。

いるんだったら早く食べればいいのに何してるんだろ。


「えっと…猫用ミルク…愛斗に貰ったっけ…」


僕が猫好きだから、猫の溜り場によく行くからとくれたっけ…
こんな時に役に立つなんて。


「はい、飲んで」

「にゃー」

「可愛いな…あ、名前つけないとね。名前…か…」


んーとうなりながら猫のミルクを飲む姿を見つめる。
黒猫だからかっこいい名前…名前…


「何に…って冬威まだプリン食べてないの?」

「…ぷりん」


冬威に振り向けば彼はまだプリンを手に持ったまま。
そんなに食べるの勿体がらなくていいのに…。


「珍しく持ってきたからってそんなに勿体がらなくていいのに」

「あ…」


冬威からプリンを奪い、開ける。
甘い匂いが漂う。


「はい」

「…」

「…冬威?」


冬威は貰ったプリンを慎重にスプーンにすくい、数秒見つめた後口に運んだ。
そのまま数秒、時が立って…


「!!」

「冬威?」


そのままパクパクと食べていく。
食べおわり名残惜しそうにカップを見つめているし…。

(プリン…好きなのかな…)

外見から想像しにくいけど…好きなのかな…プリン。
もしそうだったらまた買って来よう…


「と、プリンよりお前の名前だな」

「…名前?」

「名前!冬威いいのない猫さんの名前」

「名前…か…」

「ん、名前…」


冬威はふむと考えた後、一瞬懐かしそうな表情をした後ぼそり呟いた。


「…ジョーカー」

「え?」

「ジョーカー…だ。」

「ジョーカー?」


ジョーカーって…確か切り札って意味だっけ?
黒猫のジョーカー…


「切り札…か。成る程」

「切り札…あぁ…そういえばそういう意味だったな」

「え?その意味で言ったんじゃないの?」

「…」

「?」


冬威は黙り込み始める。
僕は意味がわからなくなったがにゃーと鳴く猫が早く自分の名前を言って欲しいと言っているように聞こえて頭を撫でる。


「よし、じゃあ君の名前はジョーカーだ!」

「…」


頭を撫で回すとジョーカーはにゃーと鳴く。
可愛いから僕がにやけてしまった。

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あきゅろす。
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