繋ぎ、繋ぐ物語
4
少女は城門の前に立った。程無くして、静かに門が開かれる。
女中に付き添われ、案内されたのは質素な離れだった。
「失礼致します。……竜様をお連れしました」
奥から返事が返ってくると、女中は障子を開けた。
少女は中へ入ると、部屋の奥に体格の良い男が座っているのを見つけた。
「おうっ、竜、待ちくたびれたぜ?」
男は片手を振り、少女を招き寄せた。
「……言われた通り来たぞ。約束通り、仕事は貰えるんだろうな」
「ああ、勿論だ。約束は守るぜ」
少女を竜と呼ぶこの男こそが、かの長曾我部元親。四国統一を成し遂げた張
本人である。
「んな硬くなるな。気楽に行こうぜ」
「嫌だ」
「……連れないな」
にべも無く突っぱねる竜に、元親は項垂れた。
「それより、早く仕事をくれ。長居はしたくないんだ」
「何だよ、そんな急かすなって。折角の平和だ。じっくり味わえ」
「くだらない」
再び、持ち上げかかっていた元親の頭が落ちる。
「……何でだ。
何でお前に言われるとこんな傷つく」
「同情でも煽ろうとしているのか?下手な芝居はやめておけ」
「しかも、傷口に塩をぬると来た」
「親切心だ。感謝しろ」
「……元就と相対している様な気分になってきた」
元親はしおれた様子で、書類を竜に渡した。
「仕事だな。これだ」
竜は、凡そ十四の娘が取るべきでない渋い顔で、書類を受け取った。
090424 更新
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