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たった一人
「ティエリア」

やめろ
呼ぶな
その声で

「待てよ、ティエリアっ!」

僕の名前を口にするな
あの人によく似たその声で

そいつから逃げるように走っていたら
がしっと手首を掴まれ
そのまま胸に引き寄せられた

「言いたいことがあるんだ」

逃げようとしても
そうすることができない

それは
そいつが僕をしっかり抱き締めているから
というだけではなく

抱き締めてきたそいつが
あの人と同じ匂いで
それに気付いてしまって
動けなくて

「ティエリアっ!俺は…」

嫌だ 嫌だ 嫌だ

頼むから
その続きは言わないで

「俺は…、お前のことが好きだ……」

そいつは耳元でそう言った
僕の肩に顎をのせて
震える声でそう言った

「やめろっ……!」

思い切り突き飛ばした
僕の目に写ったのは
哀しそうなあの人の顔

何故そんな顔をするんだ?
僕が見たいのは
あの人の笑顔なのに

「ティエリア…俺じゃ、駄目なのか?」

ちがう
こいつはあの人じゃない
あの人じゃないんだ

「俺じゃ、兄さんの代わりになれないか?」

やめろ
その顔で その声で
そんなこと言わないで
もうこれ以上
僕を乱さないでくれ

「僕が好きなのは…お前じゃないっ!」

それだけ言って
僕はそいつの前から
再び走って逃げた

もうあの哀しそうな顔を
見てはいられなかった


僕が愛したのは
あの人だけ

この世でたった一人の
『ロックオン・ストラトス』だけ





―END―
*--*--*--*--*

自分の好きな人が死んでしまって
しかもその人に似た人が現れたら
すごく複雑なんだろうな…




20080719     侑兎


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あきゅろす。
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