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By the Irony of…
「はぁー………」

職員室にいるにも拘わらず、俺は大きく溜め息をつかずにはいられなかった。
原因は、俺の目の前にある一枚の紙。
俺はそいつのせいで、文字どおり、頭を抱えていた。





  By the Irony of…





「どうした?溜め息なんかついて、らしくないな。」

隣の席のグラハム先生に、笑い混じりに話し掛けられる。

「これ、どうしたもんかなぁと…」

俺は悩みの原因となっている紙をグラハム先生に手渡した。

「…進路希望調査書?白紙じゃないか!しかも……少年の?」

「あぁ……」

「意外だな。少年が白紙提出とは……。面談したらどうだ?」

「そうするべきだよな……」

面談しなければいけないことくらい、俺にだってわかっている。
けれど、できればしたくないのだ。
あの生徒と二人きりになりたくない。
グラハム先生のいう少年――刹那と二人きりというのは、気まずいから…

刹那は真面目な性格の、頭のいい生徒だ。
少し協調性に欠けるところはあるが、大人しいし、とりわけ問題になるような生徒ではない。
身長が低いせいか、童顔なせいか、実年齢よりも幼く見られることがしばしば。
男子校であるここでは、みんなに可愛がられ(ガキ扱いされ?)ていることもしばしば。

かくいう俺も、初めてアイツを見たときは、不覚にも可愛いと思ってしまった。
いわゆる、一目惚れというやつだ。
それ以来、無意識に刹那の姿を目で追っていることもある。
もちろん、相手は生徒であり、それ以前に男であるから、間違っても手を出したりなんかしない。
だが、変に意識しないようにしようと自分に言い聞かせるほど、変に意識してしまうのだ。
だから、二人きりになるというのは俺にとって生殺し状態であって、嬉しいけれど避けたいことなのだが、気まずさの理由はそれだけではない。

俺は刹那にナメられている気がするのだ。





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