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コイツが俺の嗜好品
学校帰り、まだ別れるには早過ぎる気がして、だからといって連日俺の家に連れ込むのも気が引けて、俺が頻繁に出入りしていた廃ビルに。
俺は今日発売した雑誌を手に、古びたソファーに寝転んだ。
ティエリアはいつものように読書するのかと思いきや、部屋に残されたデスクの引き出しを漁り始めた。
あいつの考えていることはよくわからないから、放っておくことにする。


「煙草、吸ってるのか?」


しばらくしてティエリアから声が掛けられた。
雑誌から目を外してそちらを見れば、ティエリアの手には、有名な青いパッケージの箱がある。


「あぁ…、まぁな」


そう答えたが、最近は久しく吸ってない。
最後に吸ったのがいつなのかも思い出せない。

最初に煙草を吸ったときのことは、よく覚えてる。
この廃ビルの、この部屋で、だ。
俺が中一の秋だった。

ティエリアがさっきから漁っている机の引き出しから偶然見つけて、興味本位に火をつけた。
試しに吸ってみると、喉を得体の知れないものが通っていく感覚があったが、不快にはならなかった。
吐いてみれば、口から出た煙が割れた窓から入る風によって揺れた。
もう一度吸ってみれば、煙草の先端が赤くなった。
なんとなく、それが気に入った。

不味いとは思わなかった。
取り立てて美味いとも思わなかったが。
その日以来、俺は煙草を吸うようになった。
初めて吸った煙草が7mgだったから、同じものを調達して、そこの引き出しにストックしていた。


「あと何箱残ってる?」


ふと気になって、煙草の箱を興味深そうに見ているティエリアに尋ねる。


「五箱はある」
「まだそんなに残ってたか。…つぅか、さっきから箱見てるけど、吸いてぇの?」


よっ、とソファーから起き上がって、ティエリアの横に。


「いや、わざわざ金を出して、自分の身体を害する意味がわからない」
「そう言うと思ったぜ」


俺はティエリアの手から箱を取ると、そこから煙草を一本出し、制服のポケットに入れっぱなしになっていたライターで火をつけた。
久しぶりの煙草。
前と変わらず、取り立てて美味いとは思わない。
息を吐くと、白い煙が俺とティエリアの間を昇っていく。
煙の向こうでティエリアが眉間に皺を寄せるのが見えた。

もう一度吸い、ティエリアの顎をくぃと上げてみる。
そして、そのまま口吻け。
煙はティエリアの咥内に移るのだろうか。
そう思ってやってみたのだが、ティエリアはむせて俺から離れた。


「けほっ…、いきなり、なんなんだ!」
「…受動喫煙ってやつ?」
「馬鹿じゃないのか!?」


ティエリアはぷいとそっぽを向き、わざと音を立てて引き出しを閉めた。
やっぱりコイツの反応は面白い。
そう思いながらもう一度煙草を吸ってみたが、なにか口寂しくて。
俺は煙草を落として足で火を消しながら、ティエリアの肩を持ってこちらを向かせた。
そして、もう一度…



俺が煙草を吸わなくなったのは、コイツのせいかもしれない。




―END―
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ハレルヤは煙草吸ってそうだけど
見えないとこで一人で吸ってるイメージ
ティエが煙草吸ってるのも個人的には萌えるけど
今回は真面目ティエで




100410      侑兎


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