Give You a Hug
and Tit for Tat
「せーつな♪」
「うわっ!せんせ…?」
先生の部屋で夕飯を作っていれば、後ろからいきなり衝撃が。
自分のお腹のあたりを見れば、後ろから締まった先生の腕が回されている。
「俺包丁持ってるから、危ない!」
「だーいじょうぶ。変なことはしねぇって。」
ただこうやって見てるだけだから、と先生にどいてくれるつもりはさらさらないらしい。
たしかに先生からしたら見てるだけなのかもしれないけど、俺からしたら見られてるだけでは済まないのに。
顔が熱くなりながらも、なるべく先生のことを考えないように、とじゃがいもを切っていく。
「夕飯、なににするんだ?」
「肉じゃが。」
「まさか…人参入れたりしないよな?」
「入れる。」
「おまっ…!この前カレー作ったとき、俺は人参嫌いだって言ったのに…。刹那ぁー…今日は人参ナシにしないか?」
先生は俺に懇願するように言った。
俺より年上で、その上教師なのに。
先生がもし小学校や中学校の教師だったら、給食の度に人参と格闘することになるんだろう。
もしかしたら先生が高校の教師になったのは、給食がないからかもしれない。
「ちゃんと小さく切るから、食べろ。」
じゃがいもを切り終えた俺は、先生の宿敵・人参を手に持つ。
ピーラーで皮を剥いていると、先生がいかに人参を嫌いかと言うことを後ろで話し始めたが、俺は無視して作業を続けた。
やっぱり好き嫌いはしちゃいけないと思う。
皮を剥いた人参をまな板へと置き、包丁を持てば、後ろから大きな溜め息が聞こえた。
やっと先生が静かになり、トン、トンと包丁が人参を切る音が部屋に響く。
と、先生がことりと俺の肩へと顎を置いた。
突然のことにどきりと心臓が跳ねる。
.
→#
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!