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笑わば笑え
今、俺の腕の中にはティエリアがいる。
正確に言えば座っているティエリアを、俺が後ろから抱き締めている。
なんだか温もりのある抱き枕を抱き締めているようで、心地良くて離し難い。
ティエリアも人目がないところならいいのか、部屋でこうして抱き締めたり、髪を撫でたりすることに反論してこない。
ティエリアが大人しくされるがままにしてくれるから、俺は部屋で二人で過ごすのが好きだ。
まぁ、学校でティエリアの抵抗を受けながら無理矢理、というのも、それはそれで好きだけど。

そんなこんなで、ティエリアを抱き締めながら俺はテレビでお笑い番組を見ていた。
ちょうど、俺の好きな芸人がネタをやっているところだ。

「ハハ…っ!やっぱおもしれぇな、コイツ。」
「そうか?俺はもうこのギャグには飽きてきた。ギャグだけの芸人より、ちゃんとネタのある漫才やコントができる芸人のほうがよっぽどいい。」
「はいはい。お、これってティエリアの好きなコンビじゃねぇ?」

ティエリアと俺の趣味が合わないのは今に始まったことでなく、意を唱えてくるティエリアを受け流すという手段を、俺は最近身につけた。
逆にティエリアが俺を受け流してくることもあるが、それでも俺らはたわいもない口喧嘩が多いほうだと思う。
まぁ、喧嘩するほど仲がいいって言葉を信じておこう。

そんなことを考えていれば、腕の中のティエリアが小さく震えた。
何事かと思ったが、どうやら声を押し殺して笑っているらしい。
さっきからぴくぴくと震えるティエリアがおもしろい。
そこまでしなくても声に出して、笑っちまえばいいものを。

と、テレビからは爆笑が漏れた。
ティエリアばかり見ていたからどういうネタだったかはわからないが、よっぽど面白いネタだったらしい。

「ふふっ……」

テレビの爆笑に紛れて、ティエリアが小さく声を出して笑った。
このときになって、俺は馬鹿みたいに声を出して大笑いするティエリアを見たことがないことに気付いた。





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