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始めの一歩
「先生、何の用ですか?」

新しいクラスに馴染み始めた五月のある日。
俺は担任に職員室へと呼び出された。




   めの一歩




「おぅ、ティエリア。お前同じクラスのハレルヤって知ってるよな?」

「えぇ、まぁ…」

ハレルヤは同じクラスだが、喋ったこともないような生徒だった。
俺に限らず、ハレルヤと喋ったことがある人物がこの学校に何人いることか。

時々学校に来るものの大抵遅刻や早退。
出席日数もギリギリらしい。
学校に来ない日はバイクであちこち走り回っているらしいとか。
不良軍団と喧嘩して一人で全員倒したらしいとか。
彼にはたくさんの噂話があった。

「ハレルヤが、どうかしましたか?」

「ほら、アイツあんまり学校来ないだろー?だからアイツが出席するように、生徒会長であるお前にちゃっと協力してほしいんだよ。」

「そんな人、早々に退学させればいい。前々からこの学校の品格を損ねる人物だと思っていましたから。」

「アイツ、学校来ないクセに勉強は出来るから性質が悪いんだよなー…。いつもテストはお前に次いで学年二番なんだぞ?それに学校には来ないが、とくに問題を起こすってわけでもねぇし…。
それに、ティエリアもハレルヤと理事長の関係を耳にしたことぐらいあんだろ?」

彼の祖父がこの学校の理事長だから、彼を辞めさせようにもできないらしい、というまるで絵に描いたような噂は聞いたことがあったが…
先生がその話を持ち出すということは、どうやら噂は事実らしい。

「彼の裏には理事長がついているから、下手に先生たちは動けないということですか…。でも、だからと言ってハレルヤが学校に来なくてもいいというわけにもいかない。
それで生徒会長である俺に協力しろ…と、そういうことですね?」

「流石ティエリア。話が早いよ。ま、俺らもサポートという形ならできるしな。…頼まれてくれるか?」

「…わかりました。この学校の品格のためにやりましょう。できる限りは。」

そう言ったものの、面倒なことに巻き込まれたと心の中で溜め息をついた。
ハレルヤと、いわば正反対ともいえる俺が、ハレルヤを学校に来させることができると、この教師は本気で思っているんだろうか。
無理だと思っていても、やらなければいけない。

やらなければ…





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あきゅろす。
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