アメ ノ ナカ
時計を見ると、下校時刻が差し迫っていた。
結局生徒会の仕事は終わらなくて、どうやら今日も家で残業しなければいけないらしい。
文化祭が近いこの時期だし、しょうがないかと肩を落として生徒会室のドアを開ければ
「…ハレルヤ?」
廊下の壁に寄り掛かって眠る恋人の姿が。
アメ ノ ナカ
「ハレルヤ…起きろ。もう下校時刻だ。」
肩を持ってゆさゆさと揺すってみる。
「…キスしてくれたら起きる。」
姿勢は変えず、口だけ動かしてハレルヤはそう言った。
そしてまた寝たフリを開始する。
学校でキスとかいったいなにを考えているんだろうか。
ハレルヤが起きたとわかったので、寝たフリを続ける彼を置いて、昇降口へと向かう。
「おいおいっ!置いてくかよ!普通!」
ハレルヤはすぐに追いつくと、俺の隣りを歩き出した。
「ハレルヤの考えが普通じゃないんだ。」
「だって、付き合って一ヶ月くらいになるけど、ティエリアからキスしてくれたことねぇじゃん。
俺はべつに普通の考えだろ?」
俺にとって、誰かと付き合うのはハレルヤが初めてだった。
だから、俺にはどういうのが普通なのかわからない。
ましてや俺らは男同士だし余計に。
それに、一ヶ月たっても、俺にはハレルヤに抱き締められたり、キスされるだけでいっぱいいっぱいで。
いつか慣れるとも思えないくらいなのに。
俺からなんて……
とにかく、この話題にはあまり触れたくなく、話題を変えた。
「というかこんな時間まで学校にいるなんて…ひょっとして俺を待っていたのか?」
「お前傘持ってきてたろ?
俺持ってないから、帰り入れてけ。」
その言葉に窓を見れば、外は雨がしとしとと降っていた。
生徒会の関係上、一緒に帰るのは二週間ぶりで、傘目当てだとしても待っていてくれたのは初めてで、どことなく嬉しかった。
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