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sympathy
久々の休日。
僕らはティエリアの部屋で本を読んですごしていた。
二人とも本を読むのが好きだからか、どちらが喋らなくともこの空間が心地良い。
読書なら一人でできるのだが同じ空間にティエリアにいるというのが重要で、そういうときに本を読むと一度読んだ本でも違った感じを受けるのだ。


もうそろそろお茶にでもしようかと考えていると、パタンと本を閉じる音がした。
ティエリアは本を読むのが早い。
一緒に読み始め、僕はやっと半分をすぎたというくらいなのに。

「どんな話だった?」
「金持ちの女が使用人と恋する話。
身分の違いで親は二人のことを認めてくれなくて、いろいろな手を使って二人を別れさせようとする。
よくあるパターンだった。」
「へぇー…結局二人はどうなるんだい?結婚できるの?」
「いや、使用人のほうは父親たちに監禁され、女を諦めれば解放されるというのに結局そのまま殺されてしまう。」

ティエリアは淡々と説明を続ける。
内容は哀しいもののようだが、その口調からそんな印象はこれっぽっちも受けられない。

「女のほうは、使用人が監禁されたことも死んだことも知らず、使用人を探し続け、待ち続け、やがてやつれて死ぬ。」
「……可哀相な話だね。」
「ストーリー的にはよくある話だ。」

ティエリアの口ぶりからして、とくにその本から感銘を受けたというわけでもなさそうだ。
ティエリアは読書をして何を感じているのだろう。

「ティエリア的な感想は?」
「そうだな…ぁ、父親たちが別れさせようとしているシーンは面白かった。
あの手この手を使ってて。
あとは…普通、かな……?」

普通?
可哀相な内容なのに?

「哀しいとか、思わないの?」
「…なんでだ?よくあるストーリーじゃないか。」

ティエリアはストーリーの展開や設定を楽しんでいるだけなんだ。
本を読んだところで感情が動かされたりなどしない。

もったいない、と思った。
主人公の気持ちに移入したり、本を読んで感動したり、そういう感じが僕は好きなのに。

「その本、貸してくれる?」
「そこまで面白くはないぞ…?」
「いいのいいの。」

自分の読みかけの本を机に置き、ティエリアから渡された本を読むことにした。

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