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紫陽花だって恋をする
beastly pleasures




 ベッドの軋む音と結合部から漏れた卑猥な水音が室内に満ちて、その両方が俺の快感を煽った。体の中でシギの熱塊がドクドクと脈打っているのが分かる。散々やめろだなんだとほざいていた割に、敗北宣言をした時にはシギのモノはもうガチガチで、いざ騎乗位で挿入してからは下からガンガン突き上げてくる始末だ。

「やっ……ぱ、嫌がってたの、口だけじゃ、っん……ぅあッ」

 悪態を吐いた瞬間、腰骨を辿るように手を這わされて、言葉の途中だったのにも関わらず喘ぎが零れる。
 酒のせいで感覚が鈍くなっているはずなのに、シギの胸に手を突いて腰を動かす度、受け入れたそこから全身に快感が突き抜けた。

「何、笑ってんの」

 突き上げに合わせて揺れる視界の端でシギが笑う。――酷く楽しげに。額に薄らと汗を浮かべたシギの瞳は、再び余裕を取り戻していた。

「いや……店で暴れてた時には想像できなかった姿だな、と」

 そう低く響く声にさえ体が震えた。シギの動きは店で見た穏やかな表情からは想像もできないくらい激しくて、突き上げられる度に俺のモノから散る先走りが互いの体やシーツを汚していく。

 ――体の相性がいいってのは、多分こういう事だ。
 もともと快楽に弱い質なのは確かだが、今日は普段以上に感覚が鋭敏になっている。眼前の卑猥な光景も、絶えず響く水音も、部屋と俺の口内に漂う雄臭さも――触れ合った肌の感触も。感覚器官が拾ってくるもの全てが俺の快感を煽る材料にしかならない。シギの指先の動きや、荒い吐息の一つ一つで確実に追い上げられているのが自分でも分かる。

「ああぁ!そこ、ヤバ……っ!」

 一際深く貫かれ、シギの胸に突いて体を支えていた腕がとうとうガクリと折れた。そのまま体勢を整える暇もなく視界が回って、シギに押し倒される。されるがまま背中からベッドに倒れ込んだ俺の腰を掴んだシギと視線が絡む。

 薄く汗の浮いた顔に、先程までよりいくらか野性味を増した瞳。僅かに口角を上げて、楽しげに笑う――その表情に一瞬、うっかり見入ってしまった。
 その隙を見計らったように高く足を抱え上げられて、息を詰めた直後にシギが律動を再開する。

「……やらしー顔」

 薄く笑みを浮かべたまま、シギがボソリと呟く。どっちが、と言い返したいのだが、シギの動きに翻弄されていてはそれすらもままならない。
 ――ああ、畜生。こいつの切羽詰った顔を見たかったのに、既に俺の方が余裕がないなんて。

「っふ……も、イきそ……ひ、あっ」

 限界を訴える俺に、もう?とシギが意地悪く笑う。もうちょい我慢な、とすぐ耳元で囁かれた後、無常なシギの手が限界まで張り詰めた俺の竿の根元をきつく戒めた。冗談じゃない。

「ちょ……っあぁぁ!」

 あまりの仕打ちに零しかけた文句は案の定甘ったるい声に摩り替わった。マンションだし、あまりデカい声で喘いだらまずいと分かってはいるのだが、シギがイイ所を掠める度に声が漏れてしまう。

「うぁ……し、ぎ!それヤ、だ……っ」
「なんで?」
「……手ぇ離せって、っん、あぁ!っひ、ぁ、あぁぁ!」

 俺の訴えは聞き入れられる事はなく。戒める手はそのまま、シギの動きが激しさを増す。抑える事が出来なくなってきた声に危機感を感じて噛み締めた唇の上を、不意にシギの舌が這った。擽るように、優しく緩慢な動きで。

 そうして少しの間俺の唇を嘗め回した後、少し顔を離したシギが「唇、切れるって」と言って笑った。
 誰のせいだ、とかいいから手を離してさっさとイかせろ、とか、言いたい事なんていくらでもあったのに。それを言葉にするより前に、再び近づいてきたシギに口を塞がれた。強い刺激を与えられ続けた身体に、浅い口付けはあまりにももどかしくて、もっと、と強請るようにシギの背中に腕を回した。
 キスなんて久しぶりだ、と思いながらシギの舌が俺の口内を這い回る頃には、先程言いたかった事なんてどうでも良くなってしまった。正直なところこの体勢は少し辛いが、与えられる快楽がそれを上回る。

 唇を重ねる合間に感じる互いの呼吸が熱い。相変わらず戒められたまま、行き場を無くした熱は下半身で渦を巻いて、俺の体と思考を少しずつ侵食していく。シギの背中に回した腕がガクガク震えて、獰猛な突き上げに耐えるように目を瞑れば、強すぎる快感のせいで溢れた涙が頬を伝った。

 ――気持ちよすぎて、意識がぶっとびそうだ。

 限界だ、と震える腕でシギの背中を叩いて開放を訴える。口付けているせいで言葉を紡ぐ事はできなかったが、的確に意図を読み取ったらしい。根元を戒めていた手がそのままゆるゆると竿を扱いて、待ち望んでいた刺激に全身が震える。一瞬唇が離れた隙に大きく息を吸い込んで、それを吐き出す前に再び口を塞がれた。

「――っふ、んぅ……っ、」

 啄ばむような口付けを繰り返した後、促すように首筋を舐め上げられた。それが決定的な刺激になったのだと思う。ベッドの上で盛大に欲をぶちまけると同時に、俺の視界が真っ白に弾け飛んだ。



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あきゅろす。
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