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紫陽花だって恋をする
declaration of defeat
「……何のつもりだ」

 突然の状況にも冷静を保ったままの声を無視して、肩を押さえつけたままシギの上に馬乗りになる。俺を退かそうとシギの腕が動くが、小柄でも非力でもないのだからそう簡単には行かない。

「何って、ナニ?」
「まだ諦めてなかったのかよ……」

 相変わらず呆れたような声で返されて、抵抗の力が止んだ。無駄だと悟ったのだろう。こうしてやれば少しは焦ったような反応が見られるかと思っていたのだが、動揺する素振りも見せないのが冷静なのが憎たらしい。

「諦めかけてたけどさぁ……お前色気ありすぎなんだよね」

 そう笑いながら下半身を擦り付ければ、おい、と少し不機嫌な声が聞こえるが、ここまで来てやめてやるつもりはない。というか最初からヤる気満々で露骨なアプローチをしていただろう。どう考えてもお人よしなシギが悪い。
 腰の動きを止め、手で服の上からシギのソレを揉み込んだ。……体格からしてデカいんだろうなと予想はしていたが、想像以上にご立派だ。制止の声を無視してそのままゆるゆると揉み続ければ、巨大なそれはシギの意思に反して徐々に硬さと質量を増して行く。

「やめろっつー割にはイイ反応じゃん」

 言いながら服の中へと手を差し入れて取り出したブツを直に扱けばシギが僅かに息を詰めたのが分かった。完全に俺のペースだ。

「いい加減に――っ、く」

 肩を押さえつけていた手を離した隙に身を起こしたシギが言葉を放ちかけたが、最後まで言い切る前に硬く勃起したソレを口に含んだ。
 もっと焦った声が聞きたい。余裕なんて無くして、ガツガツ俺を欲しがるこいつが見たい。そんなことばかりが頭を占めて、俺を引き剥がそうとする手も、口に咥えたモノから広がる青臭さも気にならない。

「く、そ……っあんた、油断も隙もねぇな」

 耳から入る水音と時折詰まるシギの声に、むしろ自分が煽られる。どんな表情をしているのかが気になって、咥えたまま上目遣いでシギの顔を見れば、堪えるように目を閉じていた。
 は、とシギが小さく息を吐いたのを合図に咥えていたモノを離し、目の前で逞しく反り返ったソレを再び手で扱き上げながら、スッと息を吸い込んだ。

「……お前、やめろやめろって口ばっかじゃん。ホントにやめて欲しいなら本気で暴れろ、っつーか殴れよ。押さえつけただけで縛ったわけじゃあるまいし、お前の力があればそんくらい出来んだろ。いくら俺でもそこまで本気で拒否されたらやめるぜ?」

 言い終わる前に遮られないよう、一息で言い放つ。
 強引にコトに及ぼうとしているのは認めるが、全力で暴れられれば俺も流石に諦める。それが出来る程度の隙はあえて残しておいたのに、そうしなかったのはシギだ。

「殴ってまでやめさせようとも思わないなら、もう諦めて楽しんじゃえよ」

 寝てるだけでもいいからさ、と続けて笑い、手で擦りながらシギのモノに再び唇を寄せた。ちろ、と浮き上がった血管を舌先でなぞり上げ、張り出した先端を舐め回せば、生き物のように震えて、そこから溢れ出した蜜が俺の手を濡らして行く。
 それにどうしようもなく煽られて、シギのモノに舌を這わせたまま寝巻きにと借りて履いていたタイパンツの紐を解く。下着まで下ろして、シギの先走りでドロドロになった手で後ろを解せば、自然と声が漏れた。

「は、……ん」

 シギの目に、今の俺はどう映っているのだろう。自分で指突っ込んで喘いで、どうしようもない尻軽だと呆れられているだろうか。
 ――もう、それもどうでもいい。今、目の前にぶら下がった快楽を貪ることが出来れば何だって構いはしない。
 少しの間を置いて、ごく、と唾を飲むような音が聞こえた。

「……分かったよ。あんたの勝ちだ」

 苦味の強い先走りをシーツに零さないよう舐めとる俺の耳に響いたのは、予想とは違う、シギの観念したような、切羽詰ったような声だった。
 それに構わず舐め続ける内、骨ばった手に前髪を優しくかき上げられて、顔を上げればシギと視線が絡む。その表情には最早先程までの余裕はなく、俺を見つめる瞳は確かな熱を孕んでいた。




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