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気付かれぬように






「うぅ……」



ぴく、と手が微かに動き唸る声を上げて自分の体まで震えた。
少し逃げ出したい気持ちになる。

逃げ出したくなる脚をなんとか止めて勇者の目覚めを待った。



《リンク……!リンク!起きて!》

「あれ……ナビィ?俺はいったい……?」



「君はドラゴンの攻撃を受けたんだ」



幸い、優しい他のドラゴンが助けてくれたけどね。
君はラッキーだよ。
そう寝ぼけ眼でナビィを見る勇者にシークが気絶していた訳を話す。
知らない人間に勇者は一瞬顔を強張らせ警戒心を持つが、敵じゃないと知り少し肩と表情を緩めた。



「僕はシークだ」

「俺はリンク……そこの君は?」


『…………ソウマだ』

「彼は君と同じ、あの邪竜ヴァルバジアに用があるらしい」

「ヴァルバジアと………?」



わざわざ危険な状況に陥ったデスマウンテンに訪れてまで何の用だと言いたげにこちらを見る。

じろじろとずっと見られるのに良い気はしないし、他の1人と妖精1匹にも理由は話してるので同じことを彼にも話した。



「そうなのか……」

『で、随分戸惑っていたみたいだけれどアンタはヴァルバジアを殺せるのか?』

「殺せるのか……なんて簡単に言うなよ!」

『悪いな、しかし逃げてばかりはいられないぞ』



心の篭っていない謝罪をしながら
淡々と話す。
この姿はあくまで仮初めだから、変に気付かれては困るのだ。

けど安心した。リンクは気付いていないらしい、ミドに勝る鈍感に感謝しよう。
そういえば女の子からの“それ”らしい言葉にもリンクはぜんぜん反応しなかったな。



「あいつは……友達だったんだ。一緒だったのは僅かな間だったけれど」

『ふぅん。僅かな間で友達だと言えるのかは知らないが、相手は魔物だ。どう思っているかなんて分からないぞ』



突き放すような言葉投げかけると同時に
ヴァルバジアの鳴き声と地響きが聞こえた。
そろそろ早くしなければこのデスマウンテンも長くは持たないかもしれない。



「父ちゃんを助けてゴロ〜……」



少々険悪な空気のなか、
同じ空間にいたゴロン族の群れの中から
涙を流しながら小さなゴロン族の子どもがこちらに歩いて来た。



「お兄ちゃん、父ちゃんと友達なんだゴロ?父ちゃんは“見せしめ”としてガノンドロフに捕まったゴロ……」

「ダルニアが……」

「逆らえばこうなる、そういうことだろう」

「父ちゃんを助けてゴロ。父ちゃんがいないと、いないと……うわあああん!!」



たらこ唇の口を大きく開けて泣き叫ぶ。
流石はゴロン族というか、泣き声も豪快だった。
母親らしき女性のゴロン族が来てあやす。



『大丈夫だ』



硬い岩の感触をグローブの上から感じながら強く撫でる。



『ダルニアはこんなところでへこたれるような弱いゴロン族じゃないだろう?その息子が泣いてたらダルニアも帰るに帰れないぞ』

「うっ、ぐす……そうゴロ?泣き止んだら父ちゃん帰ってくるゴロ?」

『ああ。だからゴロン族が代々受け継いだその熱いハート、涙で消してしまわないよう強くならなきゃな』

「ゴロ……おら泣くのやめるゴロ。頑張って強くなるゴロよ」

『おう、それでこそ男だ。その勇気で皆を守るんだぞ』



涙で湿った顔が笑い、自分も笑い返した。
そして背後で立ち上がる音が聞こえた。
ようやく決心がついたか。



『どうだ?』

「まだ迷ってるけれど……もう一度、もう一度だけ呼びかけたい。けれど、もし駄目だったら……倒す」


『……OK、なら早速出発しよう』



力の余力を確認し、何発か魔術を放てるくらいで勇者を援護できるだろうと感じた。

こちらでの回復薬である青い薬と赤の薬を詰めた瓶やら剣を確認してる間勇者が声を掛けた。



「ソウマは……ヴァルバジアの何なんだ?ダルニアのことも知ってるみたいだし……」


『……ただの、

ただの“知り合い”だよ』




君と同じ時期と期間を過ごした、ただの知り合い程度の関係。


相手がどう思ってるかなんて、
知らないけれどね。








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あきゅろす。
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