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モノクロの世界で






ふと視界が白から別の色に変わったと判断出来た時、
モノクロの青空が自分を見下ろしていた。


白と黒でできた空なのに青空だと認識出来たのは雲が一つもないからだろうか。



地面に目線を向けると煉瓦でもない石のような堅い床。
ところどころに小さくひび割れていて、これが造られてから幾年も経過しているのが見て取れた。

堅いこの床が終わるところにはハイラル城の門のように固く、ところどころ塗装が剥げた跡がある柵が立ててあり、今自分がいる場所を囲っていた。

何処かへ続いているらしい扉が付いた小さい小屋もある。



見たことがない場所だ。


ここはどこだろう。





“ららら、ららら

ららら、ららら”



口ずさむ感じで少し声を掠れさせながら歌う声が聞こえた。

どこだと探していると思ったより近くにその音色を出す自分以外のヒトを見つけた。


肩ほどの黒髪に、見たことのない服を着た少女は自分よりも遥かに小さい。


二の腕の真ん中あたり前までの白い服に下はスカートを履いていて、線が何本か入っていて一定の間隔で垂直にまた同じ線が交わった模様のスカートだ。

膝小僧より少し下あたりの黒い履物に、それまた黒い変わった形の靴。


そんな衣装を身に纏った少女と自分の服装とは随分とかけ離れていた。
第三者から見たらどちらが異質と感じるのだろうか。


こちらに背を向けて口ずさむ少女
に声をかけてみることにした。もしかしたら此処が何処か分かるかもしれないと。



「ねぇ」



しかし、何の反応もなくずっと口ずさむばかりで何度か声を掛けてみるも反応はない。
このままじゃ埒が明かないと彼女の肩を叩こうとしてみたところすんでのところで少女は走りだしていった。



「っ、ちょっと待ってよ!」



自分も彼女を追おうとしたけれど、脚は地面に縫い付けられたかのようにいっこうに動こうとしなかった。

そんな自分をそのままに彼女は遠くへと走って、柵が触れるか否かのところで視界が白く塗りつぶされた。




* * * * *




“リンク、また……恐い夢を見た?”




起きた後に感情の整理が付かなくて、泣いてばかりの自分にユキセは優しく頭を撫でてくれていた。

人間だから寝なきゃいけないのに、ここ最近と恐い夢ばかり見ていたから寝たくない。

けれど、嫌でも眠気は襲って来ていつの間にか夢の中。




炎で包まれたこわい、こわい夢。




ハイラル城が燃えてゆくなか、ゼルダを乗せた馬が掛けて行き、全ての元凶であるガノンドロフが現れる夢。

最初はなんで同じ夢を何度も見なければいけないのか分からなくって、恐くてユキセに泣きついた。

するとユキセは翌日に変わった飾り物をくれた。

手のひらほどの大きさで渇いた蔓で作った輪っかの中に紐で蜘蛛の巣状に編み込んであり、中央には小さなデクの実が付いてあった。

これが何であるかの前にどうやって蜘蛛の巣みたいに編んだのか気になってたけれどユキセが説明し始めたので考えるのは後にした。



『古い部族が作ったといわれるお守りでね。それを部屋に飾ると悪夢を退ける、つまり悪夢を追い払ってくれると言われてるの』

「これが?」

『そう、蜘蛛の巣状になってるのはそのため。気休めかもしれないけど無いよりはいいでしょ。

(林間学校の課外授業で)作ったことがあるから覚えててよかったや』

「へえ〜、ありがとう!」

『どういたしまして。

同じ夢を何度も……っていうのはきっと、リンクに何か訴えたいことがあるんだろうけれど、恐い夢を見なきゃいけないのは辛いからね……。
せめて見る回数が少なくなってくれるといいんだけどね』



困ったように笑いながらもう遅いからと寝るように促され、横になる。

次の朝、珍しく夢を見ないでスッキリと目覚められたのでユキセの作ったお守りは本物だ!と思いずっと懐に忍ばせた。
あれ以来格段に見る回数は少なくなって良かったと思っていた。

けれど、今ではそれは間違いなんだと実際にこの目で燃え盛るハイラル城を見たときに感じた。

もっと自分が強ければ、あんなことにはならなかったのだろうか?



ユキセを置いていった自分は後ろ髪を引かれながらもナビィに叱咤され時の神殿でオカリナを吹いた。



そして気を失ったあと、起きたら時は7年も経っていて自分はおとなの姿になっていた。

7つの台座が光る不思議な空間でラウルという賢者に会い世界がどういった状況なのか、何故7年も経っていたのかを説明してくれた。

そして一番聞きたかったユキセの安否をラウルに尋ねた。


「お姉ちゃんは……ユキセは……ユキセは無事なんですか!?あの時ユキセを置いていったまま……時の神殿に行ったらすぐに助けに行こうって……!それで……」

「そうじゃな……言葉では表現し難いものだが、あの少女は生きておる。
だが、わしはお前があの娘のそばにおるのは危険だと感じておる」

「どうしてだ?ユキセは一緒に旅をしてきた仲間なんだ」

「あの娘の周りは良くないものが覆っておる、わしにはそう感じる。関わると何があるか分からぬぞ」

「それでも……!大切な、大切な仲間なんだ…もう無力なのは嫌だ!あの人を覆うものは全て振り払う!」

「……ならば探すのだ。魔王ガノンドロフよりも先にな」



どうするかはお前次第だ。



そう言い残してラウルは消え、自分は時の間からハイラルへと再び降り立った。


何か含みのある言葉だった。


ユキセに何かあったのだろうか。

ユキセを最後に見たのはちょうど自分が立っている場所。
門は破壊され川に水没している。

思い出して引っかかるのはユキセから溢れた黒い炎のように揺らめくもの。

あの中でユキセは苦しそうだった。


やはりあれが何か関係しているんだろう。



「よし、ナビィ行くぞ。ゼルダ……そしてユキセを探そう!」

《OK!神殿に行くのも忘れちゃ駄目ヨ!》



この世界に覆われた黒く厚い雲を振り払うため、俺はまた歩き出した。







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あきゅろす。
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