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シーカー族の青年






朦朧とする意識のなか、ずるずると脚を引き摺った。
火傷による激痛が常に体のあちらこちらで響いており意識は限界を訴えて意識をシャットダウンしようとしていた。

しかし、それは出来ないと必死に重たい瞼を引っ張り上げて当てもないまま石ころばかりの荒れた山道を歩いた。

ぼんやりとした薄暗い視界のなか、どこをみても現在地が分からないのだ。
ふいに風の切る音がした。

そして頭へ襲う衝撃と胸の圧迫感。

黒い雲が絶えず形を変えながら轟いているのを見つめていつの間にか意識は闇の底へと消えた。




* * * * *




固い……いや、柔らかい?
そして温かい。

近くに誰かの呼吸する音が聞こえる。

誰だ?




「ああ、やっと気がついたようだね」



目を開ければ謎の美少年が目を細めながらおはようと言った。

思わずおはようと返してしまった。なんで膝枕されてるんだ?いったい何のフラグが立った?
ここは天国か?



「残念だがここは現実だ。君は火山岩が降ってくる危険な場所に倒れていたんだ。頭から血を流してね」


頭から?
ばっ、と手を頭にやれば包帯が巻かれていることに気がついた。

話によると自分はどうやら崖から落ちたらしい。おおぅ……よく生きていたな……。
悪運だけは強いみたいだ。

指差す場所はだいぶ頂上付近で、彼がこの窪んだ安全地帯まで運んでくれたのだろう。
煙で視界が見えづらかったろうに、ありがたいことだ。



「しかし、君はここで何をしていたんだ?ここは噴火の真っ只中だ。危険だから早 く逃げた方がいい」

『……あの竜に用があるんだ。生憎、顔見知りの竜なもんでね』

「顔見知り?魔物にかい?」

『竜は知能があるからな』

「けれど、あの竜は」

『ああ、…………』



そうだ、殺すしかない。
その大義名分で来たのだ。
彼が死ねば炎の賢者の封印が解かれる。



「君から何やら不思議な力を感じる」

『少々魔術を嗜んでるもんで……よっこいしょ……っと』



目を細めて塵でも探すかのように何かを見ようとしているシークを横目にゆっくり立ち上がる。
少しよろけたが多少疲れは取れたようだ。火傷を負った部分は引き攣ったように皮膚が引っ張られる感じと痛みがし、水膨れも出来てるのだろうが我慢すればなんてことない。




『俺はもう行くよ。君は?』

「シーク、シークだ」

『……ソウマだ。では改めて、シークはどうする?』

「……危なっかしいから着いて行くよ」



また倒れられても困るしね、と一言添えて先を歩く。案内してくれるらしい。
最後に他にも倒れた困ったさんがいるからねと呟いた。
一拍後にそれが誰のことなのかわかった。リンクはまだ寝たままなのか。



マグマの脅威から少しだけ離れた場所でゴロン族達が怯えるように縮こまっている中、時折り険しい表情で魘されている人間がいた。

久方ぶりのその相貌を目に入れたとき、動悸にも似た衝撃が心臓を襲う。
一瞬呼吸が出来なくなりそうになったが、動揺を悟られないように僅かに表情を強張らせて彼の元に向かった。



『……ゴロンの服が役に立ったのか』

「よく知っているね」

『ゴロン族に認められないと譲ってくれないとか聞いたことがあるからな』



シークは怪しんでるのかこちらを少し疑っているようで見透かすような視線をたまに寄越してくる。
時の勇者からしたらシークも自分も十分に怪しい人物だけどな。

勇者の帽子からひゅっと小さな光が飛び出してきてシークの元に寄ろうとしたのだが側に知らない人間がいたことにより羽を止めた。



《シーク、その人は誰……?》



妖精……、ナビィまで訝しむような声色なので少しだけ悲しくなった。



『今暴れてる竜の知り合いだ』

《あの子を……ヴァルバジアを止められるの!?》



自分が竜を知る人物だと知り、一筋の希望を見出したかのようにさっきまで疑っていたのを忘れてこちらに詰め寄ってくる。
あの竜を殺すことなく助けられることを期待してこちらの返答を待つも、現実というのは残酷で僅かな希望をも断ち切るかのように……自分は首を横に振るしか術はないのだ。

助けられたとして世間はヴァルバジアを、魔物を許すことはないだろう。
ならば、人に忌み嫌われる前に此の手で。



『あいつの為にも、殺すことしか救う道はないよ』



エゴのようにも聞こえるそれにナビィも薄々感じていたのだろう、涙のように細かな光を零した。



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あきゅろす。
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