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遠退いた現実





『ああ〜、頭痛い………』



ギラギラと輝くピーカン照りの太陽と青空の下、青白い顔で歩く。

風邪でも引いたかな。
節々の痛みは無いけど……。

後ろからどんと背中に重い衝撃が走る。



『う゛っ』



なんか吐き出しそうな声が出た。
後ろを向けば見覚えのある顔が見えた。



「〜♪
どした?元気無いね!」

『嗚呼……頭痛の種が来た……』

「酷くない?」

『酷くない』

「泣いていい?」



是非とも樹海で泣いていって欲しい。幽霊に迷惑がかからない程度で。
暑いのに密着してくるので背中から剥がす。



「なになに?今日はずる休みしてたの?」



もう世間は夏休みに入っていて、学校が休んでもいいよーという夏休みという幸せな期間なのだけど、休みの間でも部活に行かなければいけなかったりする。部によるけど美術部がそうであって主に制作かおしゃべりか掃除だ。

部員達に暑い中教室で掃除出来るほどの体力もないので顧問の担任も適当だ。


『違うから…、病院だよ病院』


頭痛が原因で病院行ったが風邪と判断された。
今は処方箋を貰って薬を買ったその帰り。

………早く帰りたいなぁ(遠い目



「夏休みだし、ぱーっと遊ぼうよ!!」

『おいコラ人の話聞いてた?』



今は頭痛で後の事を考える余裕が無く、分かれ道で友人と別れた。
隣で喚くな煩い……。
ええ?扱い?これがいつも通りだよ。
大丈夫、あいつはタフなのでちょっとやそっとじゃ泣かない。




* * * *




夏休みが来ても余りワクワクしないのは大人になったからかな………。ほら、宿題とか沢山あるわけで。
休む日が沢山あってもまず宿題の方に目がいっちゃうというか。寧ろそれをやる為の長い期間じゃないかな。

文化系部活は終わってるこの時間帯、陽も傾き初めており辺りは赤い世界へと変わっていた。



逢魔が時、という言葉をご存知だろうか。
夕方と夜の曖昧な時間帯、昼が夜へ移り変わる時間帯を指す。
意味は《怪しいものに出会いそうな時》、《著しく危険に出会いそうな時間》など。

もう夕方時と認識した途端余計なくらい胸の内がざわついた。


そして胸がむちゃくちゃになるくらい、様々な色が大量な量で混ざり合っているような、そんな嫌な感じ嫌な予感がする。


この嫌な予感ほど当たる物は無く……、


目の前が真っ黒で見えなくて、サアッと血が抜けるような感覚と目の奥が痛むような感覚とで立っていることすら辛い。

前かがみになり頭を押さえる。

長い間陽に当たっていた訳でもない。


頭痛が最高潮に達し、激痛に視界がブラックアウトする。

何もかも聞こえない見えない感じない。

そして意識までもが遠退いていった。




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あきゅろす。
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