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反逆者





炎の中、必死に少女を探した。もう既にガノンドロフの手から逃げ出せたのだろうか。



《あそこ!!》



ナビィが見た先はガノンと対峙するインパとゼルダがいた。

こちらに気付いていないガノンはゼルダ達と何か話している様だった。



「私はトライフォースの力を手に入れ、ハイラルの王となる。
いや、世界全ての支配者となるだろう」

「いいえ、あなたには出来ません!「時の勇者」と「優しい翼」がハイラルを救う為に現れるわ、必ず。
あなたを倒しにね!」

「フ……、有りもしない迷信を信じ、しかも妄想までとは片腹痛いな姫よ」



ガノンの言う通り、迷信くさいものだ。

だけどそこまでゼルダはその迷信と妄想を信じてる。

リンクと自分が訪れるのを待っているのだ。

ガノンから逃げたインパはゼルダを連れ、敵を倒しながら逃げるが、苦戦しているようだ。



「ゼルダ!」


リンクはゼルダが乗っている馬を必死に追い掛け、自分ももう疲れたが最後の力を振り絞ってリンクに急いで着いていった。



「インパ!馬を止めて!!」

「駄目です殺されてしまいます!!」

「でも……!!」


『早く行けインパ!!!!』



しきりにこちらを気にするゼルダを見計らい、インパに叫ぶ。



「ユキセ!!」

『ッゼルダ……!!
きっと会える!
だからッ……だから
それまで生き延びてよ……!!』

「……そうだッ!!強くなって迎えに行くから!!」



インパに頼む、と意味を込めて視線を向けると力強く頷いてくれた。



「…っユキセ……、リンク…。


これをっ!」




インパが決意を込め馬に鞭を入れ速度を上げながら去っていく時、ゼルダはこちらへと放った。


ひとつ、音を立て転がった。


それはガノンがもとめてやまない時のオカリナ。


インパとゼルダを乗せた馬は闇に紛れた。



「フッ………取り逃がしたか」



自分の中で警鐘がはげしく鳴り響いていた。
あの時と違って今のこいつはヤバい。





『………………ガノン…ドロフ』



小さな光でも容赦せず覆い尽くそうとする闇。
諸悪の根源とも言えるべき人物がそこにいた。



「ほう、お前…か………」

『あぁ……えー、久しぶりデス?』



敵に挨拶かとこちらを見てくるハイラル出身の一人と一匹。
そのままスルー。
謙虚さと礼儀正しさが日本人の美徳さ。



「小娘、先日よりも力が増している。
何故だ?

何故お前がそんな力を持っている?」

『……さぁ?』




何の話だ?
自分にはそんな力持っていない。




「まあいい。先ずは時のオカリナだ。
こっちに渡せ」

「誰が渡すもんか!」

『!
リンクっ!?』



勝てない相手なのに走って行ったリンクは魔法によって弾き飛ばされ、勢いよく倒れた。


拍子にオカリナが落ちてしまい、ガノンが拾いあげてしまった。

しかし、よく見るとそれはサリアからもらった方のオカリナだった。
リンクには可哀相だが何も言わない方が良さそうだ。



『リンク!!』



リンクの元へ駆け寄り、体を起こしてやる。
リンクにはまだ勝てない。

当たり前だ。
ガノンドロフは強い、
所詮子どもの力なんてたかが知れてるんだ…………今は。


ならばリンクを神殿へ連れて行って大人にすればいい。



……それしか方法が無いのは悔しいけど。




『リンク、大丈夫?』

「オカリナが………」

『シッ。………リンク、何も言わずにこのまま神殿へ走って』



ガノンには聞こえない音量でリンクに話すと、リンクは驚いた表情でこちらを見た。
心配をかけないように笑顔を作る。



『大丈夫、神殿の奥へ行けば安全だから』

「ね、姉ちゃんは…?」

『ちょっくら話し合いに行くだけさ。
ほら、早く立って。戻ってきちゃだめ、絶対だよ』




リンクを無理やり立ち上がらせ、リンクの頭をぽんぽんと叩きながら背中を強く押す。

自分も立ち上がりガノンと向き合う。




「刃向かう気か。愚か者がすることだぞ」

『なんとでも。こちとら愚かかどうかなんてまで考えてないんで』



剣を抜き、相手を見据えた。
剣を強く握った。
相手も剣の使い手であり、魔法も操る。正直勝ち目がしない。
嫌な汗が体中を伝う。

昔なら考えられないよね、
この状況全てが。

絶望しかない中、何故か笑みが浮かんできた。
人間ってどうしようもない状況になると笑いしか出ないっていうけど、本当だったんだ。



ふと、横に誰かが並ぶ気配がした。



「姉ちゃんだけにはやらせない!」

《ナビィも頑張る!》

『……ッ!!
なんで戻ってきたんだよ!!』



思わず怒鳴った。
リンクに怒鳴ったのは意外と初めてかもしれない。
いや、前もあっただろうか。



『バカ!早く行け!!』

「嫌だ!!」

『……バカリンク!』



一向に退こうとしないリンクに仕方なく諦めて敵を見据える。



「フッ、来ないのか?こちらからいくぞ」



手に闇の塊を溜めてこちらに放ってきた。
結果は言うまでもなく、所詮は子供の力だ。
勝てる訳がなかった。

既に自分は身体中傷だらけで、隙をみてリンクが飛びかかるも虫を払うかのように弾かれ地面に叩きつけられていた。
もう止めろとリンクに叫んでももう聞いていない様子だった。



それまた傷だらけの緑を庇い、リンクに魔法で止めを刺そうと手にまた闇の塊を溜めているのを見て、その隙に一気に駆け出した。

リンクみたいに叩きつけられて自分もボロボロだ。
どこもかしこも痛くて堪らない。
でもリンクだけは……!

もう、自棄みたいなものだった。
何も考えずに走って、ただガノンドロフに剣を振り上げた。
至近距離まで一気に近づいてやった、と思った時




ガノンドロフはこちらを嗤いながら向いた。


右手には闇の塊。





ヤダ、


そんな近くから放たれたら、


死んじゃ……。





「残念だったな」





少し時間が止まったよう感じられた。
スローモーションのように、時がゆっくりと流れるように、自身の身体は地面へと落ちていった。


魔法を喰らった時、心臓が止まったかの様な。

次に鼓動が聞こえたと思えば何かが痛みと共に喉からせり上がってきた。



『かはっ……、っ!?』



口から溢れ出る吐血した血は手を見ればとても黒く感じた。

対象的に空が青い。
仰向けのまま動けない。
苦しい。


満身創痍の身体に何か、良くない力の湧く様な………、頭痛や吐き気に襲われた。

立つ事すら億劫になる。



「…………なに?」



怪訝な表情を浮かべこちらを凝視する盗賊王。
姉ちゃん………?と突然の事に頭がついていけない小さな勇者。
2人の注目を集めてる自分はすぐにそれが理解出来てなかった。


なんだか力が溢れ出る、限りなく。
何か壊したい、破壊したい衝動に掻き立てられる。

自分を振り回そうとする訳の解らない感情に涙が溢れてきそうだ。

悲しさに涙腺が緩むように、なんだかよくわからない何かでとても悲しくなった。



『な……に、これ……』



血は既に固まり、ドス黒い靄のようなものが手に纏わりついて離れない。



壊したい。
壊したい。
嫌だ…………。

壊したい。壊したい。壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい。
自分の感情なのに止められない。
まるで怒りのようだ。



『リ、ンク』

「や、やだよねぇちゃん……」

『くぅ、……』

「ねぇちゃん!起きてよ!ねぇちゃんも……」

『リン……ク……』

『リンク…逃げ…て……』



戸惑い、恐怖に怯える目の前のリンクにそう警告する。
声が出ない。

警鐘、激痛、衝動。

……危ない、自分が。
気が狂いそう。いや違う。


狂ってしまった方がまだマシだ。
そう思ってしまうくらいだ。
いや……こわい……。




「気味の悪い小娘だな」

『ッ』



首を力強く掴まれ宙ぶらりんにされる身体。
元は疲弊しているので四肢は力無くぶらん、と下がっていたままだ。
首が締まる苦しみに顔が歪む。
自分が死ぬのも時間の問題かもしれない。







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