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クーデター





「な、なんだよこれ……!!」



遠くから見える暗雲と煙に包まれたハイラル城にリンクは驚愕の表面を見せた。
風によって微かに煙と嗅いだことのない、不快な臭いが鼻を掠めた。



「何が起こって……」

『……クーデター、かもな』

「クーデター……?」

『反乱だよ。今の国に気に食わない、もしくは苦しんだ奴等が起こす争い。
今回は……前者だろうけど』

「……!!じゃあ、起こしてるのは……!!」

『恐らく、ガノンドロフ……』



目を細めて城を見た。
既に魔物やゲルド賊が町の人々を襲っていることだろう。

日本では見なかった凄惨な光景を目にするだろう、確実に。


それでも。


横にいる小さな勇者を時の神殿へ向かわせる為に。


今ではきっとこの状況を救えることは出来ないけれど、

未来なら。



『行こう、リンク』

「……うん!!」




燃え盛るハイラル城に向かって勢い良く走り出した。

未来の為に / 約束の為に。




* * * * *





破壊された城門に辿り着いてもゼルダを乗せた馬は来ない。
早く来すぎたのか……?いや、そんな筈は……。
もしかしたらまだ城にいるかもしれない。



「城を探そう!」



リンクもゼルダが城にいるかもしれないという部分に関しては同じことを思っていたようで、自分もその提案に頷いた。

ナビィは恐怖に逃げ惑う人々から溢れる気に怯えてかリンクの帽子の中から出てこない。


城門に向かって逃げ出す民衆に流されないように、手ではなくリンクのベルトをしっかり掴んで少しずつ前へ進んだ。

時折りリンクを見ながら狭苦しい僅かな空間をすり抜けていく。




がしりっ、



『ッ!?』

「あの時の坊やとお嬢ちゃんかい!?」



掻き分けていた腕をいきなり掴んできた手は、ここでお世話になった宿屋のおばさんだった。



「何処に向かおうとしているの!早くお逃げ!!」

「けど……ッ!」

『駄目なんですっ!!』



喧騒に負けないように大声で叫んだ。
真剣に目を逸らさずに相手を見つめる。



『城に行かなければいけないんです!!絶対に……!!』



ゼルダに会って時のオカリナで未来に行かなければいけない。
そうでなければハイラルは真の意味でガノンドロフに支配され世界は破滅の道へまっしぐらだ。
そうなってしまえば自分も元の世界に帰れなくなってしまう。

それだけは駄目だ。



『行くよ!』

「う、うん!」

「あ……お待ち……!」



強く掴まれた腕から手を無理やり振り払って走った。



城に近づくにつれつんとした鉄の臭いがただよってきた。
道端には力尽きた人や鎧を被った兵士もいた。
皆ピクリとも動かない。

何かが込み上げてくるのを必死に我慢した。

じゃないと、視界がボヤけて走れなくなってしまいそうだ。
既に脳内で警告音が鳴り響いているのだ。
それを無視して、必死に走った。
城を見れば炎は強くなり全てを飲み込もうとしている。



「はぁっ……きっとこの向こうにゼルダが……」

『……っ、……はぁ、入れ違いになってなきゃ……ね』



各々武器を取り出しながら互いに顔を見合わせ、頷く。
そしてかつて此処に訪れた時くぐれなかった城内へ続く大扉を開けた。
火の強さもさることながら、スタルフォス達が城内を跋扈しており兵士と戦っていた。

城の室内は既に炎が広がって通れなかった。

外側の至るところに続く階段を登っていくことにした。
上からなら見やすいかもしれない。その分煙がキツいところもあったが。



「うわあっ!!」



悲鳴が聞こえ、自分達が行こうとしてる階段の入り口付近にスタルフォスにやられそうになってる兵士を見つけた。

錆びた剣を今まさに振り下ろそうとしているなかで間に入ってそれを受け止めた。
受け止め方なんて見よう見まねだ。
そして無理やり押し返した。



「んだこのガキッ!!」

『うっせ!
リンク!脚の関節!』



関節部分を切ればそのまま倒れていき、立ち上がろうとしても足を切られた為立ちあがれないスタルフォスがいた。

あとはこっちのもんだとラウンドシールドでスタルフォスを押さえつけて思い切り踏んだ。


「このやろう!!」


残ってた手で剣を持ち切りかかろうとするがその前に頭蓋骨に剣を突き刺した。

やっぱり骨になっても頭は急所なのか。そのままぱたりと動かなくなった。



「君達は……いやなんでこんな場所にいるんだ!!」

『ゼルダは何処ですか』

「友達なんだ!!」

「そんなことよりも早くここから……」



話の途中で向こうから恐らく目の前の兵士の名前を呼ぶ他の兵士がこちらに向かってきた。


「そっちは大丈夫か」

「……ああ、この二人が助けてくれた。
お前もなんで此処にいるんだ!!」

「この城も大事だが友も大事だろう?」



遠目でスタルフォスに押されてるのを見かけて助けに来たらしい。
友人というその兵士にまてま言われてしまいぐぅの音も出なかったようだ。



「ありがとう、友を助けてくれて。
城は燃えても残るが友は残らないからな」

「………姫は此処から南の方だ」

『!!
ありがとう!』



助けに来た兵士はいきなり何のことかさっぱりのようだけどそのまま私達は南へ向かった。

南は此処よりも炎の手がひどいところだった。



「姫を友達と……」

「ああ、あの時城で壺を壊した少年と付き添いの少女だったようだ」

「会ったことあるのか?」

「いや、遠目でだ」

「そうか……あの噂の……姫は良い友達を持ったな」

「そうだな、友の為に助けにいく勇気はなかなかのものだ」

「俺のようだな」

「ハハハッ……さあ、もう一仕事するか」

「ああ、そうだな」





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あきゅろす。
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