ゾーラの里
やがてゾーラの里へ辿り着き里の隠された入り口、小さな滝の前のハイラル王家の紋章が刻まれた石の元へケポラゲポラは降り立った。
ケポラゲポラから降りて滝を見つめた。
恐らく向こうにゾーラ族とリンクはいるのだろう。
「ユキセ」
滝の水を叩きつける音に紛れてしゃがれた声が耳に入り振り返った。
「この旅は長くとも決して優しくはないじゃろう。リンクはいずれ大いなる試練に立ち向かわなければいけない」
『それは………決められたこと?』
「勇者の名を持つ者ならば」
『……私は……その先に元の世界に戻る方法があるなら……』
リンクは未来、命を掛けた運命に立ち向かう。今ならまだ間に合う……そう言いたいのだろう。
ずっと着いていけるか分からないけれど……。
例え時を越える事があろうとも……。
『決して、死なない。あの子があの妖精と一緒に歩み続ける終わりまで』
「……そうか。さぁ、お行き。きっと既にリンクは辿り着いている筈じゃ」
自らの翼を大きく広げて強く叩きつける様に翼を羽ばたかせた。舞う風と砂埃を腕で防ぎながらケポラゲポラを見送った。
「闇に気をつけるのじゃ。知らぬ間に足元に潜んでいるやも知れぬ」
去り際のその言葉はこの精霊石を全て集めた後のゲルド族のクーデターの事を指しているのだと思っていた。
この時は…………。
* * * * *
紋章に記されているハイラル文字を解読する術は無いが、この模様が城以外にあるならそれはハイラル王家に伝わる子守歌を奏でろと暗に言われているのだと自動解釈した。
音程がずれない様に子守歌を奏でるとモーゼを思わせる様な感じで滝が独りでに割れ、隠された通路が現れた。
薄暗いが慣れれば転けることはなかった。
壁を伝いながらゆっくりと一直線の洞窟を歩けば冷んやりした空気と共に明るみのある空間に出た。
『…………!!』
そこは鍾乳石が神秘的に光り、水面に揺れる影がきらきらと輝いていて、言葉にも出ないほど幻想的だった。
澄んだ水の流れる湖には魚が優雅に泳いでいた。人魚が泳いでいても遜色ない程の鮮やかな青だ。
人が通れるように削られて整備されてある坂道を登って行きキングゾーラがおわす玉座へと足を進めた。
ぬめぬめした毛の無い水色の肌と肘付近に付いたヒレ、やけに長い頭にエラ。
半魚人の種族であるゾーラ族の銛の槍を持った兵士の姿が見えると若干警戒した様子で槍で地面を叩いた。
「何者だ」
あながち歓迎って訳でもなさそうだ。
まあ、種族の違いもあるし身形(みなり)がこれだ。王女の使いと言っても疑われそうだ。
『ユキセと申します。ハイラルの王女の使いとして参りました。……こちらに緑の服装をした子供と妖精が流れて来ませんでした?』
「ハイラル王女の……?それを示す証しを拝見させてもらおうか」
『ハイラル王族に古く伝わる歌を奏でてこちらに来たんです。それを証に出来ないですか?』
「秘密の入り口から……良かろう。ちょうど子供が上流から流されて来たのを引き上げたばかりだ。ついてくるが良い」
慣れない敬語を使いなんとかハイラル王女の使いだと認めさせ、ゾーラ族の後を着いて行く。なぜ上流から流れて来たのかとか何で知ってるのかは聞かないでくれた。
フクロウから落ちましただなんて通じるかどうか……。
やがて辿り着いたのは広い空間の奥に座りこむあの巨体の王の姿が見えた。
あの狭い空間が広くなったと思えば良いだろう。
流れる水の中に座るキング・ゾーラ王。
側には警護兵と従者。
その中央にはリンクとナビィがびしょ濡れの濡れ鼠になって倒れていた。
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