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大いなる運命






元の世界には帰りたい。

友人達に会いたい気持ちもある。けれど、それだけなんだ。

自分の両親はもういない。

今の両親は偽物で、8歳で両親を亡くしたあと少々のたらい回しで9歳の時母の妹夫婦に自分は引き取られた。

彼等は優しい。
けれど若い。今は子どもはいないけど、もしあの人達に子どもが出来たらきっと自分は用無しになるんだと思う。
いつかそうなるならと自分は距離を置いた。

もともとリンク達と一緒にいるときのように自分はそんな笑ったりよく喋ったりするようなタイプじゃない。
元の世界では容姿と重ねてあまり対人関係はよろしくなかった。

リンクが年下で我儘を言わない話しやすい子で、ナビィも友人のような親しみ易さがあったからああやって上手く話せたのであって。

この世界で自分が関わっただいたいの人達が元の世界の人間とは違う何かがあったから、逆にそれが新鮮で話せたのだと思う。
(恐らくこちらが彼等を一方的に知っていたのもあるだろうけど)



「リンクよ、いつか己が歩む道で迷う事もあるだろう。
無力だと感じる事もあるかも知れん。
じゃが、自棄にならず今自分が出来る事をするのじゃぞ。


自分で見極める事も必要じゃ。
さすればきっと正しい道が現れる」



リンクにケポラゲポラが語りかける。



「そしてな、おぬしは自分で望んで森を出たと思っとるだろうが……

実はずっと前から運命づけられていたのじゃ」


「え?」

「ま、じきに知るじゃろう。
水に揉まれて鍛えるがよい」



ホッホウ。

とリンクを離し悲鳴を上げながらリンクは川へ無事に落ちて行った。
何がホッホウだ意外と惨たらしいなケポラ爺さん。


多分帽子の中にいるナビィも道連れだろうな。
生きてゾーラの里にいることを祈ろう。



「さて、おぬしも…『落とすなら羽根引っこ抜く』
恐い娘さんじゃの……年寄りをもっと労らんかい(汗」



年寄りは子供を川へ落とすなんてしないし。
元からその気が無いのか何なのか落とす事はなかった。というか当たり前だ、リンクのように丈夫じゃないのだからこの高さで落ちたら海じゃなく川の藻屑になる。陽が高くなった頃には土左衛門だな。



「デクの樹から話は聞いておるよ。異世界からの来訪者よ」

『……あのじいさん口軽いんだから(ボソ』



まあ知っているなら話は早い。



「おぬしも大変なものに巻き込まれたのぉ。
剣は扱えるようになったか?」


『まぁ、ぼちぼちは……』


そんな短期間で半人前に剣が扱える様になるほど才能は良くない。無理無理。


「ホッホウ、成せば成るというじゃろ。
さすればきっと上達するだろう。頑張りなさい」



緩やかに旋回しながら大梟は
言った。
でも小さい頃から習ってる訳でも無いし…。出来るかどうか……。


「おぬしは何やら悩んでおるようじゃの」


『………』


「ホウ、何も言わずともわかる。雰囲気じゃよ雰囲気」

『雰囲気?』

「まあ勘とも言えるがの。少なからずワシはお前さんの事情を知っておる。どうじゃ、話す気にはならんか?」



話す……か。
この世界が元の世界でゲームとして存在してるなんて言ったらこの梟はどう反応するだろうか。
自分なら信じはしない。
夢小説の様だとは思うが疑う余地も無く信じないだろう。
自分が信じざるを得ないくらい。
そういった状況に陥らない限り。

恐らくリンクやナビィにすら話すつもりも無かった。
勘は鋭いリンクだけど世間知らずで助かった。
このことは墓まで持っていくつもりだった。

ケポラゲポラに話してしまったらどうなるだろうか。
老いて姿を変えた賢者だが、例え全てを話してしまったって彼が何かをするといっても何も思いつかない。
飽くまでケポラゲポラはリンクの生まれを知る、賢く言葉を話すデクの樹の古い友人なのだ。
説得したとしてもハイラル王がたかがフクロウの話を信じるとは思えない。



『……ゾーラの精霊石は見つかるかな』



夜の寒い風が頬を掠めるのを感じながらぽつりと呟いた。
ただの戯れ言だ。



「ゾーラの里は古来からハイラルの水門を守る場所。ハイラルの王家の証を示せば彼らも道を示してくれるじゃろう……」

『そっか……じゃあ後はリンクが無事流れ着いてくれれば良いだけだね』



無事の部分だけ強調して言えば梟は唸った。
子どもを空から川に落とすなんて鷹でもやらねぇよ。





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あきゅろす。
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