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大梟ケポラゲポラ





コミュニケーション能力も自信ないし、絵を描くことくらいしか取り柄のない自分に何が出来るか……。
絵の関係する仕事とか?この世界にそんなものあるかな……。



『…私ここで働こうかな……』

「ほんと!?大歓迎よお姉さん!!」

「え!?姉ちゃん旅はどうするんだよ!!」

『いや勿論この旅が終わったあとだよ?』



一国の王女からの大切な使命なんだから、何よりも優先しなきゃいけないし。
帰れないのは嫌だけど路頭に迷って野たれ死にするのも嫌だ。
まあゼルダなら褒美代わりに働き先を斡旋してくれるかもしれないけれどやっぱり可能性もある。
ある程度働いて、それから元に帰れる方法を探す旅に出てもいい。

まあ、どれもガノンがクーデターなど起こさず未然に防げたならの話だが。



「(あっ、そっか………姉ちゃんが一緒にいてくれるのはデクの樹サマのお陰なんだった……)」

「ねぇ森の妖精クン?」

「え、あ、なに?」

「あなた達ってどんな旅をしているの?オトナがいない旅の人なんてはじめて見たもの」



確かに、子どもだけの旅なんて親がいたら絶対にさせはしないだろう。
それがいない私達だから出来たのであって。
しかし危険なことには変わりないけど。



『世界を周ってるだけの旅だよ。あまり宛てもない、ただの旅』



嘘を吐いた私に戸惑ってるリンクに『ゼルダ以外に話しちゃまずいものなの』と耳元に囁いた。
なんたって王女直々のご命令を無闇に話したらやばいだろう。しかもガノンドロフが関わってる。



「なら森の妖精クンもお姉さんもここで暮らしちゃえばいいのよ!わたし弟とお姉ちゃんが欲しかったの!」

「え、えぇ!?」

『良いかもね。今なら妖精も付いてくるよ』

《ちょっと、ナビィはオマケ扱いなの?》


憤慨するナビィをスルーして、ここで暮らす風景を思い浮かべた。
長閑でのんびりとした牧場で暮らせるのだ。
コキリとハイラル王国の中間地点だからどちらにも行きやすい。
馬を走らせ、牛の乳を絞り出荷して過ごす。
剣を握ることはない暮らしは良いかもしれない。

けれどまあ、元の世界に帰りたい自分にとって叶えられそうもない暮らしだろう。



「姉ちゃんと一緒……いいかもなぁ……」

『え?』

「もちろんナビィも一緒だもんね」

《当たり前でショ。ナビィはパートナーだもん!》



目の前ではしゃぐリンクの緩んだ笑顔を見ていた。
コキリの森に帰ろうとは思ってないのか聞こうとしたが耳元に微かに聞こえた音にそれは叶わなかった。



『…………何か聞こえない?』

「え、何が?」

「なにも……」



あのカラスの魔物はいない。
その音はこちらにだんだん近づいていった。

……そうだ、何かが羽ばたく音だ。

夜空を見渡していると目を凝らせば見える黒い影。
大きな鳥のようだ。梟だろうか。

…………こんなに耳良かっただろうか?


バサアッ、と人一人覆えるような大きな翼を広げて目の前に降りてきた。
風が前髪を大きく揺らした。



「うわぁっ!!」

「まぁ、大きな鳥!」



リンクは驚いて尻餅を着いたが、マロンは目を輝かせて梟を見ていた。
頑張れ勇者。自分はあらかじめ知っていたからそんなリアクションもなく驚かなかった。



「ホウ、だいぶ逞しくなったようじゃの。リンクにユキセよ」

「喋った!?」



老いた話し方をする梟は夜の暗さでも鈍く星の様な輝きを見せた。



「おっと自己紹介を忘れておったの。
ワシの名前はケポラ・ゲポラ。
リンクや、お前の事は赤ん坊の時から知っておるぞ。デクの樹とも古ーい知り合いじゃよ」

「デクの樹サマと!?」



コキリの森で聞き慣れてしまった名前にリンクが反応した。
リンクの反応を楽しむかの様にこのデカイ梟は頭を180度回転させたりしていた。
中身はいにしえの賢者だと言われている大梟はストーカーでもしていたのかと疑うことを口にしてみせた。



「リンク、精霊石がゾーラの里にあるのは知っているな。
このワシの話に耳を貸すなら脚に掴まれ。連れて行ってやろう」

「……連れてけ!!」



一瞬悩んだが、直ぐに決心着いたようでケポラゲポラを睨む様に見つめた。
早速ケポラゲポラに向かおうとする足を服を引っ張ることで止めた。それで少し首が締まってたのは見ない振りをする。



「ぐぇっ……、姉ちゃん何を」

『リンクは武器も無しで次へ行こうとするのかなー?』

「あっ!やべ!」

「ホッホーウ!即答した割にはうっかりじゃのう」

「ぐ……!」



立つ瀬がないようで声を詰まらせていた。



「もう行っちゃうの?」



振り向けば少々寂しげに眉を下げたマロンがいた。
くるっとした癖のある髪を梳くように撫でる。



『ちょっと用事が出来ちゃってね。また此処に寄っていいかな?』

「うん!今度来たら旅のお話聞かせてね!」


花が咲くような可愛らしい笑顔を見せ、それに笑い返しながらケポラゲポラの脚に捕まった。
しかし二人の体重を支えられるのかこの梟。



「また遊びに来るよマロン!」

『じゃあまたね!』

「ぜったいよ。ぜったいまた来てねぇー!!」





マロンが言い終わるまでにはもう姿が見えなくなっていた。





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あきゅろす。
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