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脱出





『誰かいないー?』



……いるわけないか。
なんせ迷いの森だし、迷ったら二度と人に戻れないと云われる所に来るなんてない、か。



「だっ、誰だお前!!」

『へ?』



ぼやいてたら近くに誰かいたらしい。誰かがそこにいた。
リンクと同じ緑の……コキリの服、だろうか?暗くて近寄らないと解らない。



『?
誰?どちら様?』

「お前こそ誰だよ!」



質問を質問で返された。
悲しい。

近寄ってみれば薄暗いなか、保護色のどこかで見たシンプルな服を着ていた。コキリ族のようだ。前髪が長く、目を悪くすんじゃないかっていうくらいに伸びていた。
自分もそうだがそこまでじゃない。
これは酷すぎだ。



『森に迷っちゃって』

「えーっ!?何だお前もかよ!!」



……という事はあっちも知らないようだ。困ったな。


さて、どうしようかな。

1.少年と探す

2.一人で探す

3.諦める

4.スタルキッド゙になる

因みに1以外認めないぞ★



「くそぅ…。リーダーーがあんな事
しなきゃこんな目に合わなかったのに……」



何やら少年がぶつぶつ言っている。迷うとスタルキッドこのままだとスタルキッド何とかしないとスタルキッド。
なんで無謀に辺りをさ迷ったかなぁ……。



『はぁ………』

「話聞いとけば良かったナァ………はなし………?はなしはなし……
あああああぁぁっ!」

『うるさっ!……どうしたの?』

「風が吹いてる方へ歩けば自分の行きたい所へ帰れるって聞いたんだった!よっしゃ!これで帰れるゼ!」



ずいぶんなご都合主義だなと思いながら
少年にならい舌で軽く唾をつけ、風を探る。つか早く思い出せよ。

風は外から来るのかコキリの森からなのか解らないが…やってみる価値はあるかな…。

暫くすると風が指に当たった。コキリ族の少年の方に振り返ったが、既にその姿は無かった。
え、置いてけぼり?

少年の言葉は確証は無いが、今は藁にもすがりたい気持ちなので歩いた。
ずっと同じような景色を延々と歩くのは怖くて仕方なかった。

風が当たる方向へ進むと少年の言った通り、切り株辺りまで戻る事が出来た。

なるほど、闇くもに歩いたら疲れて果て死んで。森の虜……て感じかな?




* * * *




切り株に座っている少年に声をかけると安堵のような喜んだ顔を見せた。



『まだスタルキッドにはなって無いよー』

「お姉ちゃん生きてたんだね…良かったぁー!」



日にちがあいてたので迷って死んだかスタルキッドになったと思われたみたいだ。



「姉ちゃん凄い格好…」

『え?あぁ……これ…』

「ついてきて!」

『え?う、うん』



髪の毛には枝や葉っぱが引っかかってズボンは泥だらけになっていた。手や腕も血が出ていた。
切り株から離れ、暫く歩くと(自分が探した場所とは反対…だったらしい)小屋が幾つかある森に囲まれた集落へと着いた。
此処は……コキリ族の森の所だ。



「ほらほら早くっ!」

『え、え?』



あたりは既に夜になっていて、しん、と静かで虫の鳴き声が聞こえるだけだった。
外に出ているのは二人だけ。



『………?』



着いたのは一本の木ををくり貫いて作られた可愛らしい家。リンクの家のようだ。高いところに作られてるのは魔物避けかもしれない。



「ほら、此処になら治せる薬とかあるからさ。姉ちゃん、お家遠いでしょ?」

『あ……なるほど』



嘘が役に立つとは。
有り難く薬を使わせて貰う事にした。……けど使い方が解らない物だらけで一つずつ教えて貰った。

なんか毒々しい色をした薬(…?)もあったが冷や汗を垂らし教えてはくれなかった。

…………?
聞かないでおこう。


後に教えて貰い衝撃がリンクのように冷や汗と共に出て来たのは別の話だ。

「オレさ……もう来ないかと思ったんだよね」


ふとリンクがこう呟いた。腕の治療をしてくれているので前屈みになって表情は隠れて見えない。



「外から来た人は皆スタルキッドになるって、言われてるぐらいだし。良かった……」

『あはは……』


自分もそう思った。
悪運だけは良かった……怪我だらけだけど。



「真っ暗の中大丈夫?」

『大丈夫、姉ちゃん(多分)強いから』



運で乗り切れるさっ。
……………多分。
霧が溢れる森の中、歩くのは正直怖い。超怖い。しかし、帰らねばいけない。



『大丈夫だって。
あ、ほら、これあげるから』

「………何これ?」



渡した物は小さい頃みんな使ったクレヨン。ちなみに新品。食べても平気な樹脂を使った物。
それとスケッチブック。



「ありがとう!大事に使うよ!」

『ん、それじゃ』



後ろへ手を軽く振りながらリンクに背を向け、暗い森を携帯の光で歩いた。

何とも不思議なもので、ただまっすぐに霧の薄い所を歩いてたら切り株へたどり着いた。

切り株の周囲だけ霧が晴れている。まるでこの場所が何かに守られているような感じだ。精霊みたいな存在でも住んでたりするのだろうか………。




晴れた空はまだ赤く染まっており、時間を確認すると5時だった。なんでまだ明るいんだろうあっちは暗かったのに。
………前は時間は一致していた。
なんでだろ?

時間差があるものなのだろうかと考える。なんせ世界を跨ぐ移動。
リスクがあるのかもしれないと考え、この場を後にした。



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