牧草香る
あれから数時間後眠れずに今の今までずっと起きていた。
またリンクに本当のことを言えなかった……。
言うべきだったんだけど……やっぱり、触れるのが怖いから。
薄々気づいているはずだ。リンクにあまり自分のことを話していないのを。
でも言ってしまったら物語が変わるんじゃないか……これが一番の懸念なのだ。
それによって元の世界に戻れなくなってしまったら……。
けどリンクに言わないというのは、なんだか信頼してないように思えて……。
うわぁああああああっ!
「姉ちゃんなんで地面でのたうち回ってるの?」
『……毛布の上だから大丈夫』
《毛布が解れるヨ》
脳内のキャパがパンクして思わず声を上げてしまった。
いけないいけない。
ちょっとナビィに訝しげな感じで見られたが何も言わないことにした。
あの後、倒れた自分をゴロン族の……メス?いや、女性陣が心配したけれど寝たのでだいぶ体力も戻り元気になれた。
ダルニアはもとより心配していないようで、顔を見て相変わらず豪快に笑っていた。
精霊石を一つ手に入れた自分達は残りの一つであるゾーラのサファイアを手に入れるべく山を降り、ゾーラの里に続く道を探した。
が、
『……どこだよ』
《ユキセ……顔がスゴイことになってるよ…》
かなりの奥地にあるというゾーラの里を探しにハイラル平原の半分は探し尽くしたような気がするのは気のせいだろうか……。
ゲームの通りにはいかず川など根っこのように沢山あってどれが里に続いてるのだか分からなかった。
詰んだかもしれない。
《もしかしたらずっとこのままかもね》
『そしたらどこで暮らそうか……』
「ちょ、二人とも気が早いよ!!何このまま暮らす話になってるのさ!!」
『……現実は厳しいってことだよリンク』
遠くを見ながら呟いた。
マジで長い間探しても見つからなかったらどうしようか。帰る方法も、精霊石も。
いっそのことカカリコ村で暮らすか。
茜色に染まる空を見上げながら疲れた身体を休めた。
今日も野宿か……。
リンクは地図と睨めっこしながら、自分は空を見ながらとぼとぼ歩いているとしばらくしてナビィが叫んだ。
《見て!大きな建物が見えるよ!》
大きな敷地にたまに牛の鳴き声が聞こえるそこは、庶民派ヒロインと某配管工ルックがいるモーモー牧場だった。
次は牧場に行くようです。
泊まれないかな。
「誰かいますかー?」
《陽も暮れてきたネ………》
薄暗くなりつつある時間帯の中で暗いのが苦手な一人と一匹(匹…?)はびくびくしながら人を探した。
いつも平気な振りしてこういうのは駄目なのね。
『そういえばさ……』
「な、何?」
『暗い夜の時に出るんだよね………
アレ』
「あ、…アレ?」
《な、何ヨ……。ユキセまさか恐がらせるつもり?》
『いや、そうじゃないけど(ゲームの話だけど。しかも7年後の)
ある村の墓守りが亡くなって、夜にたまに鳴るんだって。……何かを引きずる音が』
「お、音?」
『そう、ズ……ズ……って』
そういえば恐がりってしなくていいのに色んな事を想像しちゃうから恐いのは駄目らしいね。
この一人と一匹も例に漏れず、その通りで聞いたら
一人と一匹は真っ青だった。
面白い。
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