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不安と涙





あと一つ、ゾーラのサファイアがあればこの遠足のような命がけの旅はひとまず幕を閉じるだろう。


けれど、きっと、お城に帰る前に、
ゼルダに会う前にガノンドロフはハイラルを襲ってしまうのだろう。


それはとても辛くて悲しい事だ。
けれど、自分は知ってるだけで……恐らく何も出来ないまま眺めているだけで終わるのだろう。

分からないよ……。未来を変えて良いのかも分からないのに、変えられる力さえもないもの。

リンクにこの先を知っていることを告げたら果たしてどんな反応をされるだろうか。
未来を知っている。


じゃあ、デクの樹の死も見て見ぬフリをしたのか……と責めるだろうか。


いつか別れなきゃいけないのに、今いる場所が心地よくて、リンクのそばを離れてしまったらきっと一人で生きていけないから、

本当のことを隠して嫌われないよう、リンクに優しく接しようとする自分はなんて卑怯者なんだろう……。






集落から脱け出して歩いた先はデスマウンテンの頂上付近の坂道だった。

山中だからだろうか、地上の光が届かないこの場所は夜空の星がとても鮮明に見えた。


元の世界では普通では見られない光景だった。

こちらに来てからいつの間にか寝る前に夜空を見上げるのが日課になっていて、
虫がさざめく声を聞きながら星を眺めていた。


宝石のようにきらきら光って散りばめられた星星はもうすぐ見れなくなる。

厚い雲に覆われてしまえば結局は惑星の外から見える数億年前の屑なのだろう。



そんなことを思いながらしばらく夜空を眺めていた。




* * * *




少し肌寒くなってきたから中へ入るとリンクが涙を溜めながらこちらに視線を向けた途端、走ってきた。
夢見でも悪かったのだろうか。



「姉ちゃんっ!!どこの行ってたんだよっ!!」



怒ったように……、いや思いきり怒っていた。
いきなり大声で叫ばれて思わず目を開いてきょとんとしてしまった。
それでも起きないゴロン族と妖精一匹。
ナビィ図太すぎる。



『……怒ってるの?』

「だってッ!傷いっぱい作ってた癖にっ起きたらいなくなってて……ッ!!
このままどこかいなくなっちゃうんじゃないかって思ったんだからなばかやろぉーッ!!」



自分よりも小さい子供の怒声が耳に響く。
……初めてリンクにばかやろうって悪口言われたかも。
少し嗚咽を交えながら怒鳴るリンクの頭を撫でた。柔らかい毛だから撫でるのが癖になりそうだ。



『……ごめんね、心配かけて』

「オレだけじゃない!ナビィだって心配してた!」

『うん、ナビィにも謝らないとね』

「ホントにこのまま消えちゃったのかと思ったんだからなっ!」



膨れっ面でそっぽを向いてしまいこちらを向いてくれない。



『ごめん』

「……ホントにそう思ってる?」

『……豆スープ付き、特製ハンバーグで手を打とう』

「うっ……、って物で釣るな!!」

『ちっ……バレたか』



ちなみにハンバーグはカカリコ村のメニューで食べたなかで一番旨かった。
それなりに良い値段したけれど。



「姉ちゃッ」

『ごめんね……、私がもっと力があれば怪我もせずにリンクに心配を掛けることもなかったのに……』



リンクから顔を背けて軽く後ずさりながら、手を後ろで組んで周りに視線を流した。

だってさ、足手まといじゃない?
倒すのに時間は掛かるのに怪我はするし、体力は無くて今回だって倒れた。



『いいよ、足手まといだって。体力無しだって言って』

「そんな……オレだって……!」

『でもさ、このままじゃダメだって思ってる。
強くならなくちゃ、きっと帰れないもん。
傷なんてへっちゃらだって、直ぐに治るし』



表情筋を動かして微笑んだ。



『だから、リンクから離れないよ。
ね?』

「……うん!!じゃあ今から一緒に修行な!!」

『あ、いやそれはちょっと怪我が……』



包帯巻いてるの忘れてませんかリンクさん。
剣を取りにかぐいぐい引っ張られて傷が痛いですリンクさん。
確かに傷なんてへっちゃらなんて言ったけど。あれか、心配した仕返しだというのか。


なんとか言葉巧みにリンクを今から修行というのを止めさせた。


作られた笑顔を称えながらリンクの手を引いて歩いていく。


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あきゅろす。
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