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手に伝わる温かいモノ





敵を切り伏せながら色の違う壁を爆弾花で爆破させた。
先は敵だったり道だったり。

しばらく進むと広い空間に出たと同時に、通っていた道が岩で塞がれてしまった。



「なんだっ!?」



岩を退かすにも大きすぎて退かせない。
薄暗くてあまりよく見えず、地面もひび割れ底にマグマが見えてそれで何とか地面は分かった。
周りをよく見ると薄暗い空間に影が二つ見えた。
ギャッギャッと獣染みた鳴き声が聞こえる。



『敵か……』



簡易な甲冑に剣を持った二足歩行の巨大トカゲ、リザルフォスが現れた。

やるしか……ないのか。

けどここドドンゴが住む洞窟だよね、それ以外がいていいのか?



《隙を見て攻撃して!》



巻き込まれないように高く飛び回り、リザルフォスを見ながら敵を教えてくれるナビィ。


こいつ、ゲームでも苦戦したからなぁ。
とにかくすばしっこい。隙を見せたら即座に斬りまくった記憶がある。
そしてその時の状況の最大の相違点は、リンクは盾があるけど自分は、……無いことだ。


『(………(汗)』


適度な間合いをとりつつ、相手の出方を見る。

敵は基本愚鈍で攻撃のパターンが分かりやすく、少ない。
なのであんまり攻撃されてもぎりぎりで避けれた。


ここだと思った時、剣を横に振った。
だけど、誰から教わったんだと疑問に思うくらいにリザルフォスはそれを剣で弾き返す。

ビリビリと持つ手が痺れるが、相手も少し仰け反ったので素早く持ち手を左手に変えて斬り込む。
が、少し腹を傷つけただけでまだぴんぴんしていた。



『(っ…)』



目の前のこのトカゲも他のモンスターと比べ、多少の知能はあったとしてもよく見れば猪突猛進なんだ。

それでも負けるのは経験不足だろうか。手の甲や腕に切り傷が増えていき、服も所々裂けていった。

攻撃がなかなか当たらないのだ。
眉唾はやはりただの眉唾だったのか。
剣を縦に突き出され、間一髪で避けるが頬に血が流れた。



『(やり方は、なんとなく分かってきたけど……ッ)』



けど確実な仕留め方が出来ない。どうすればダメージを与えられるか。
冷静に考えられるのはじわじわと来る痛みのせいだろうか……。
いつの間にか恐怖は不思議と消えていった。
どうすれば倒せるか、それだけに必死で脳を回転させる。



『(遊ばれてるし……!)』



相手は余裕そうで剣をくるくる振り回してる。
リンクの方をちらっと見るあちらはそんなに苦戦してなさそうだ。
よかった。こちらはヤバイけど。

後ろに後退すれば踏み外しそうになり下はもちろんマグマ。踏み外せば指輪物語よろしく跡形もなく熔けるだろうな。



『冗談じゃねぇ……』



想像したらゾッとしたよ…………。



《ユキセ!右に避けテ!!》


急に頭上から叫ばれた大声に咄嗟の判断で身体を右へ倒した。
瞬間、
襲いかかる剣が地面を叩きつけ抉ったのを見て、息を飲む。



《ユキセ危ナイじゃない!よそ見してるとやられちゃうよ!》

『ご、ごめん……』



ナビィに怒られて剣を持ち直した。
そうだ……考え事なんてしたら一貫のお仕舞いだ。こんな中途半端なダンジョンで
早く終わらせないと…アイテムかなんか無いかな。
………アイテム?



バッグのポケットに入れた粉の袋を取り出して中身をリザルフォスに向かってばらまいた。

突然の粉の襲来に鼻と目に付いてくしゃみと涙を流す。
視界を奪った隙で剣を弾き、思いきり胸を刺しこんだ。

あまりの抵抗のない、するりと入った剣の切っ先の感触に石のように体が固まった。
目を見開いたまま動けなかった。

吐血を混じったけたたましい悲鳴もやがて断末魔に変わり、ぱっくりと空いた口から夥(おびただ)しい血が刃に伝い、それは柄を、手を赤く染めた。


リザルフォスが崩れ落ちた先はマグマの中へ。
高温の熱で消えていった。




『…ッ……、』




胃の中からせり上がってくる何かに思わず口元を押さえた。
喉をきゅっと絞めて出ないようにする。


だいじょうぶ、大丈夫だ。
はじめてだから慣れていない、だけ。

血が滴り落ちる剣を見て僅かにカタカタと手の震えで音が鳴る。
血は熱さで乾いていった。



「姉ちゃん!」

《ユキセッ、キズ!》

『………大丈夫だよ。薬はあるから』



あちらも終わった様子。
手の震えを隠して剣に付着した地を払い、鞘へ戻す。

はは、まだ震えてら。


剣を持つ以上血を見ることになるって覚悟はしてたけれど……、あのむわっとする死臭っていうの?
アレは無理だった。ダメ。


薬を塗って、次に進む準備をする。
来た道はもう行けないが新たに進める穴を見つけたのでそこへ行った。

口の中は気持ち悪い唾液でいっぱいだった。



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あきゅろす。
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