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迷いのもり





『うぅ………』




なんか頭がぐわんぐわんとする。


次元を越えた副作用……なのだろうか?
切り株に座り込み、暫くこの頭の違和感に振り回された後、ようやく止まった。痛みはないけど凄い脳みそが揺らされてる感じだった。
後遺症残らないよね……これ。


改めてまわりを見渡す。
うん、前に来た時と変わらない風景。霧も段々と晴れてゆき、視界が良くなった。

しかしどういった仕組みで世界を行き来できるのか。

何故あの切り株からこちらへ来れるのか非常に不思議で、最初は霧が辺り一面を覆い、暫くすると消える。目に見えるほど異常な速さで霧が動くのだ。
不思議でしょうがない。





『しかしリンクが見えない、と』





仕方ない、あの時に何時になど会う日にちも時間もちゃんと決めてなかったし。
ただ会えたなら、と思っただけだった。

分かりやすいように前会った時の服に着替えて、山を登り切り株の場所を目指した。

またあの世界へと行けるとしたら此処しか思い浮かばなかったから。






単身一人コキリの森へと行っても外の見知らぬ人間だと怯えさせてしまうかもしれないし。
迷いの森の中をうろつくのは一歩間違えると森に食われる、というかスタルキッドになる。

それもしょうがないか
とどこかズレた思考で歩き始めた。スタルキッドにも性別はあるのかとか若干ワクワク気味だったりする。

何処もかしこも木々が光を遮って薄暗い。この場所は明るいけど。まあ緑緑としてるから絵を描く時花を加えたりしてたしかに良かったかもしれない。

とにかく、探した方が良いかな。ただこうしてるのも暇だし。思ったが吉日という訳で歩きだした。しかしながら自分は此処が迷いの森という事を失念していた。




薄暗いから当然草で腕を切ったり。
半袖で来るべきでは無かったな、血と泥だらけ。下はジーンズだけどさ。
しょうがない、さっきまで暑い所にいたのだから。しかし此処は暑くないから上着でも着て行った方が良いかも知れない、てか今度…があるかは知らないがそうしよう。
一人で自己完結してると足に柔らかい物をふんだ。


「……」

『……』


どうやら、頭に草を生やした此処の住民を起こしちゃったらしい。
アハ、ユキセったら悪い子♪
…………。




* * * *




『ゼェッゼェッ……ッ!!』




種が当たった後頭部を摩りながら木の影に隠れた。
頭イタ……あんなろ、後頭部に当てやがって……!
あう、軽くコブが………。

大分息が落ち着いた所で、周りを窺う。どうやら撒けたようだ。しかし耳をすますが何も聞こえない。聞こえるのは自分の呼吸と森から来る虫のさざめきだけだ。


今自分が置かれてる状況を一言で表すと、


迷子だ(ズーン
薄暗く、とにかく撒く為だけに逃げ惑った。とにかく脚を沢山動かした。普段動いてない訳だから明日は筋肉痛確定だろう。



『(どうしよう……)』



迷い易いほど同じ景色が続くから迷いの森と呼ばれてるだけあって、今何処だかもわからない。誰も此処に迷っている人がいるなんて知らないから自分で歩くしか無いようだ。
ストレスで禿げそう。

最悪此処でターザン生活か……。それも良いかもしれない…。食料があるかわからないけど。
それ以前にスタルキッドに成り果ててるか…。スタルキッドって何を食べてんの。

人の肉?
肉食系とか冗談。




『………ホントに異世界、だなぁ』




零れた言葉は静かな森の中に消えた。
けれどこのほわほわした違和感は消える事は無い。妙なところで現実主義だったらしい。

だってあり得ないじゃないか。

異世界なんて行ける訳など無いのだ。物理的にもどんな理論をもってしても不可能だ。
所詮彼もあの襲ってきたモンスターもゲームの中の敵、画面の向こうの世界の住人だ。


自分は今本当に此処にいる?

きっと此処は夢なのかもしれない。

現実はずっと意識不明の中にいて此処で走って疲れて……。
けれど、これが夢ならリンクのあの笑顔も描いた絵も夢なんだ……。




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あきゅろす。
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