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陽はまだ高い





ぱちっ、と目を覚ました。

確か目蓋が重くなるまでずっとアイヴァンと剣の稽古を付けて貰っていた。
それで意識が無くなって……。

そうか、寝ちゃったんだ。

きっと親切心からアイヴァンさんはこのベッドに寝かせてくれたんだろう。
重かっただろうに。いや、決してアイヴァンさんがひ弱だとかそういうのじゃなくて。とりあえずごめんなさいと心の中で呟いた。

いつの間にかベッドの中にいて隣にリンクが抱き着いてて……。
びっくりするから抱き着く癖は止めなさいとあれほど………。ああああもうなんか自分がお母さんみたいになってるし。


リンクの顔に手を当てて引き剥がし、のそりと起き上がる。
隣にあるベッドには本来寝ていた筈のリンクに使われないままベッドの上に無造作に置かれた毛布が物悲しげだった。

自分がいなかったら枕に抱き着いて寝ていたらしい。枕にもしわくちゃの跡が付いていた。

まだ身体が疲れてて脳が寝たいと言う。いや実際言ってないけど。

これは筋肉痛になるかな……。げんなり。



* * * *




「ありがとうございました!」

良い笑顔で二人に向かって言った後此方に向かってきらきらとした視線を向けた。
犬みたいだなと思いながら頭を撫でたら喜んでた。
犬だ。

「あの、いいかしら」

と心配そうな表情を向けるおばさん。こちらに歩みよって手をぎゅっと握った。



「私達、もうすぐカカリコへ行くわ。良かったら……私の子にならない?」



自分はリンクと顔を合わせた。リンクは服を握りしめて来るだけだった。



『…ごめんなさい。私達にはやるべき事があるんです。それはきっと長いから……』


「そう、ごめんなさいね我が儘言ってしまって。この世界は危険だけれど決して死んでは駄目よ。生きてこその生だからね。じゃあ、魔物に気をつけて行ってらっしゃい」



握っていた手を離して手を振ってくれた。アイヴァンさんも軽く手を上げた。
こちらも手を振りながらこの名前も知らない村を出た。
恐らく、もうこの寂しい村に来ることは無いだろう。



「あの二人、家族じゃないらしいよ」
「そうなのね……髪色も顔つきも違っていたから不思議に思ってたけれど……」

「……そろそろ準備をしようか」

「そうね、あまりこの光景は好きじゃないもの」




「やるべきこと……か」




* * * *



〈ふぅ……重い空気だったわ……〉

『ナビィ、大丈夫?』

「ナビィそんなに辛かったのか?」

『てっきり未練ある幽霊とかいるかなと思ったけどポゥは出なかったけどねー……。』

〈分かんないけど。とにかくナビィはもう行きたくないヨ〉



『一体、この村には何があるんだろうね……』



小さな最後の呟きは風のみが聞いてやがて、風に流されていった。さわさわと草木が囁きながら風と躍る。
陽はまだ昇り続けている最中。
少ししたら昼食がてら休憩でもしようか。


カカリコ村まで後少し。




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