[携帯モード] [URL送信]
ちっぽけな現実





初めて……トリップ?をしてから数日が経った。
まだこの事は誰にも話していない。秘密にしたいという訳では無いけど………きっと、これからも話すつもりは無いと思う。


まず先日と一緒にいた友人に話したとしても信じてはくれないだろう。自分でさえ昨日の事をあまり信じてないのだから当たり前だ。



お昼休みの教室の中、ふと嫌な視線に気付く、が敢えて無視。

……そう、大人しい人間を目につけて言いなりにさせる奴。
そんなにおとなしく無いのにね。寧ろ心の内でガンガン言いまくってます。ただ表に出さないだけなんです。


昔は対応していたけれど、そのしつこさに諦めて無視することでその場を納めてた。
無視されるのが気に食わないのか手を出されることもあったけれどそれでも無視した。
もうごめんだよ、こういう奴らに関わるのは。

歪んだ笑みを浮かべてクスクスと陰口を叩く。叩くだけ叩いたら開始とでも言うように此方に魔女のような悪どい笑顔を浮かべて来た。



「ねぇ赤桐さーん」

「ちょおっと頼みたい事があるんだけれどぉさぁ、お昼御飯買ってきて欲しいのぉ」



語尾伸ばすな気持ち悪い。
……なんて言えないのが自分の性…。ああ自分が怨めしい。
こんなときに
『なら自分で買いに行きなよ馬鹿らしい。語尾伸ばすなキモい。ほら、そんなに食べたいならそこら辺のゴミ置き場でも行って漁ってれば良いんじゃないかな。その方がエコだと思うしお昼ご飯代浮いて良いと思うんだけど』

て、言えば。

「…はあ?何コイツ反抗してきたしwwちょっと校舎裏にk(ry」
て返ってくるだろうしなぁ。
これ以上面倒臭いから止めて欲しいんだけども。
………眼鏡と長い前髪がいけないのかな。いやしょうがないしね。短くしたら恥ずかしいだけだ、自ら恥じるような事はしたくない。


しかし、ずっと無視してもぎゃあぎゃあ騒ぎ出しそうだし、かといってんなこと素直に聞く必要なんて無いし……。


その時。
ぎゅむ、と勢いよく抱き着いて(私の肋骨が机の角に当たるおまけ付き)くる人間。



『………重い、痛い、苦しい』



いきなり飛び出てきた(抱き着いてきた)人物は自分の全く多くない友人その一。
というか、期間的にも最も交友が深い、と思う。



「ねぇねぇお腹空いたー、ご飯食べよー?」
始終笑顔でかなり近い位置にいる二人を完全に無視して早く食べよー、と駄々を捏ねる友人。

更には人の鞄を漁り弁当箱を取り出して(待て、なんでそれを)いつも食べてる場所へ移動した。



『あ、ちょっ』

「今日はコロッケパンがいいかなそれともカニクリームコロッケパンがいいかな、あ、カレーパンも捨てがたいなぁねえねえユキセ、どれがいい?」

『……コロッケパン』

「じゃあそれにしよー」



……この子は第一に食べ物を考える人間だ。
いやまさか、この子が自分を庇うましてや、このお腹が悲鳴を上げる昼休みにそんなことするはずが無かったようだ。
なんでこいつと幼馴染みなんだろう、自分わかんなくなってきた。




『はぁ………』

「ん、どした?」

『(友人チラ見して)……はぁ』

「ちょっ!人の顔見て溜め息吐かないでよ!!」



溜め息も吐きたくなるわ。

こいつはよく絡んでくる幼馴染みなのによくわからない人物。一部で恐れられてるらしいしさっきの2人もなんだか怯えた様子だったけど一体知らない所で何してんのやらι

キュッ、キュッ、と上履きが廊下を擦る音が複数聞こえる。弁当や食堂で買ったものを持って行き来する人が沢山いるなか、弁当を落とさない様にしっかり持つ。ぶつかって落としたら大変だ。
廊下を歩いてる途中、友人はこんなことを聞いてきた。



「前に描いたポスターのさ、あれ何処で描いたの?あんなにいい所あったっけ?」



あ、あれね……。
途中異世界で描きましたー、だなんて言えないし。それにそんなに良いものだろうか。ただ着彩しただけのものだ。



『あー…、えと…大半脚色くわえて…ね』

「え゛、ずるっ!」

『でも結構テキトーにやったからさ……』

「ほんとー………?」



あやしまれてるが気にせず前を歩いた。
大丈夫、食べ物の前でならそれ以外の事忘れるだろう。



「あ、パン買ってくるねーん!」

『わかったー』



コロッケーと良いながら走っていく友人を一瞥し、食堂のテーブルで自分も弁当を広げた。
余り好かないこの弁当をしょうがないと思いながらもつつく。



『(今日は短時間授業……か)』



ならば思い立ったが吉日、と
もくもくとおかずを食べながら午後の予定を組むのだった。

その後



「先に食べてるし!浮気もの!」



と言う友人に軽く白けた目を向けると愚友はorzの状態でなげいた。
しかし持っているパンの数が女子中学生のものとは思えない量なんだけれど。



.

[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!