寂れた村
しばらく歩くと見知らない村へとたどり着いた。
『此処は……?』
損壊の激しい部分が多数あり、とても安全に住む事が出来ない程の家屋が軒を連ねる。
けれどまばらで、損壊の少ないのも見かけた。
「ここどこ?」
『分かんない』
魔物にやられたのか……?
人気は無くて、閑散としている此処は何処と無く寂しい印象を与える。
時間にさえ忘れ去られてしまったようでもある。
〈……ナビィ帽子の中に入ってるね〉
と言ったきりリンクの帽子の中に入ってしまった。妖精にとって何か悪い気でもあるんだろうか、すっかり出てこなくなった。
『(ナビィ……?)』
「人がいないか見てみよう」
『え、ちょっと』
君子危うきに近寄らずって言葉知ってる?リンク…………と口で言えずに自分もリンクに着いていく。
見たことがないこの光景に驚きと恐怖が混じりつつ、人がいないか辺りを見回す。
いたらいたでなんでこんな所に住み続けるのか分からないけれど。
「あ、ねぇおばさん!!」
……いた。
正確な歳は分からないが顔に皺をつけた、けれどお婆さんと呼ぶには若い顔立ちをしている。
「あら、こんな辺鄙な場所に人が来るなんて。
何かご用かしら?」
『すみません旅の途中で。……ここに住んでいるんですか?』
「ええ……大分荒れ果ててしまったけれどね」
そう言い昔の情景を思い出したのか遠い目をした。
まずここに人がいたのが不思議だ。
これだけ酷いと住むのも難しいのに。
「あら……もうすぐ夜が訪れるわ、中へお入り。泊まっていっていくといいわ」
『良いんですか?』
「ええ、人が来るのはそう無いの」
と言われれば、特に悪い気もしないので、リンクと顔を見合わせて頷いたのでご好意に甘えることにした。
おばさんはカレヤと言う名前で、娘と息子がいるらしい。
けれど、娘は他界してしまったらしい。
息子は今ハイラルの兵士として働いているそう。
「そう、あなた達は何も知らずに此処まで来たのね……」
『……え?』
「家に招いた私が言うべきでは無いけれど……悪い事は言わないわ、早く出ておいき」
「え!?」
クッキーをもしゃもしゃと食べていたリンクが驚いた。
口回りに沢山カスが付いていたので仕方なく取る。
「今すぐになんて言わないわ。……明日には、此処を立ちなさいね」
そう言われ、紅茶を入れに行ったおばさんを見た後、リンクと顔を見合った。
こうまで他人に忠告するのだからあまり悪い人には見えないんだけど……。
ああまで言うのだ。おばさんの言った通り、明日には出た方が良いのだろう。
おばさんが戻ってくるまでリンクにそう話した。
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