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夜長の星





だいたいここら辺で野宿しようかと辺りを見回して平気だと判断したあと、木枝を拾い集めた。

雨は降っていないので、火打ち石で石同士を弾いてそこから出た火花で藁を燃やし、そして枝に火が移るまでずっと火に風を送る事を繰り返すとやっと小さな焚火が出来上がった。



『できた……』

《大変な作業だネ》

「焚き火ひとつ作るのにこんだけ時間が掛かるなんて思わなかったよ……」



ぱちぱちと爆ぜて大きくなる炎。
時折風によって大きく揺らめく。
リンクは火花が空へと舞う様に飛んでいっては虚空へと消えていくのを見ていた。

コキリの森では火を使うことはあまりなかった。誤った使い方をすれば、それは火災に繋がるからかもしれない。
火は木にとって、デクの樹にとっても大敵だからか。


予め川で捕った魚の鱗を取り腸を抜いて串に刺して、塩を振り火にあてた。簡易式の鍋でもあれば温かい汁物も食べれたけれど。生憎買うのを忘れてしまっていた。
今度また城下町へ寄ろう。
彼処のほうが行商の物が沢山ある。



「焼けた?」



うきうきとしながら魚をじっと見つめる。
お腹から元気な音が鳴り響いていて、もはやそれを隠すのをやめていた。

美味しそうな匂いが煙と共に漂い焦げ目も程よく付いているし、もうそろそろ良いだろう。元ある知識と本からの知識の集大成である焚火と焼き魚をリンクに渡して自分も串の部分を掴んだ。



「いっただっきまーす!」

『いただきまーす』



日本仕込みの挨拶を言い、軽く冷ましてからはむっと魚を頬張る。旨い!とがっついて食べるリンクに骨が刺さるよと注意しながら自分も魚を頬張る。

塩が身へとしみて、更に魚の旨味が凝縮されてとても美味しい。



〈ユキセが本を貰って前よりも旅が良くなった、てところネ!〉

『あはは、そうかな?』

「姉ちゃんとナビィは知識でオレは力だね!!」
〈まぁ期待してるワ〉

「ちょっと!どういう言い方さ!!」



リンクとナビィの口喧嘩はいつものことなんで、右から左へと流して魚をむしゃむしゃと食べ続けた。早く食べないと二本目の魚が焦げるよリンク。
そう言うと焦って食べるもんだから喉に詰まりそうになって噎せた。
リンクはもう少し落ち着け。




* * * *




焚火に新しい薪をくべながら
ふと、ゼルダ姫の言葉を思い出した。



"優しく、暖かい風"


それらをつくりだす"魔物の翼"


本来イレギュラーであるはずの自分に関わるものなのか分からないけど翼なんてないしこれから生える予定もない。

ホントにそれ合ってるの?見間違いでは?と聞いたら



「あら、わたしの予知夢を嘘とおっしゃいますの?」



と言われて怖かった。
何がというと言葉より表情が、だ。

些細な夢でも当たるものは当たるらしい。リンクに水難の相が出てると言ってたら今日本当に川でリンクが足をつって溺れてた。
侮り難し、ゼルダ姫。


しばらくすれば喧嘩も夕食も終わり、
交代で見張りをすることにした。

モンスターが襲ってくる可能性もあるので、リンクには頑張ってほしい。


まぁ出てもどうせ骨っこの魔物くらいだ。
しかも光に弱い。


今はいかに浅く眠り、効率よく体力を回復させることに体を馴らすかを考えよう。


そうして夜は更けていった。



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