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新しい武器と





「ねぇユキセ、あなた武器持ってる?」

『短いナイフなら……』

「だと思ってね。ね、インパ」

「……しかし、あれは王の…」

「お父様はボケてるからもう忘れてるわ。ずっと放置にしっぱなしだから剣が泣くもの。
はいユキセ。新しい武器よ!」



そんな新しい顔よ!的なノリで出された剣。



『え!?いやそれは……遠慮

「何か?」

ワーイトッテモウレシイナ!!』


〈……見事に棒読みね〉



というか、良いのか勝手に持ち出して。クラリネット壊しちゃった的な事になるぞ。
なんだかんだで貰った剣は特別な装飾もされていない普通の長剣だった。
良かった、壊れたらどうしようかと思った。
なんでも若かりし頃に使っていた剣だとか。
手に取ると、お、重い………。



「やはりな……ゼルダ様、やはり短剣などの方がよろしいです。
身の丈にあった物でないと彼女自身が大怪我を負ってしまう」

「………そうですね、ではお父様の…」

『ハイラル王の剣はもう良いです……』



残念そうな顔しないでほしい。どんだけ困らせたいんだハイラル王女。
反抗期か。反抗期なのか。
インパから貰った次の武器は
ちょうど良い重さでリンクの剣より長い物だった。



「子供……しかも少女に剣など持たせたくはないのだがな…世の中が世の中だからな。護身用だ」

「オレが退治するよ!」

〈私だって!!〉

『………ありがとう、
…インパさん、リンク、ナビィ』



何か込み上げてくるものを感じ、吃りながらも感謝した。



「インパで構わない」



良い人たちばかりだなぁ……この世界は。
便利なもののない世界だからこそ皆で手を取り合って生きれる世界、か。



「ところで、あと二つの精霊石はどこにあるの?」

「水の精霊石のありかは解らないが、炎の精霊石はゴロン族の長、ダルニアが持つと聞く」

「よし、行こう姉ちゃん!」

『ん!』

「リンク、ユキセ待って」


少し不安げな顔のゼルダが行こうとしたリンクと自分を呼び止める。



「大丈夫。
絶対オレ達がガノンドロフより先に石を見つけてくる!!」

『……だから、ゼルダはオカリナを守ってて。必ず…戻って来るから』

「…………うん、
ガノンドロフに奪われないように、私も頑張る。

気をつけてね」


そう言ってゼルダ姫はリンクにキスを贈る。
美少女と美少年……。
絵になるくらい似合うなぁこの二人……。


頬にキスをされたリンクは真っ赤な顔で暴走した……ウブ。

ユキセも、と額にキスしてくれた。可愛くて思わずぎゅっと抱き締めた。
なにこの可愛い子!!

リンクは暴走して普段は出せぬ速さで走り回っていた。
必死に隠れた庭の騎士を無視して走る走る。



〈あんだけ元気あればこの先も大丈夫ネ〉

『……今壺が割れた音が聞こえたんだけどあれ弁償にならないよね大丈夫だよね』


リンクを呆れた目で見ながら重みのある剣を持ち上げて見つめた。


剣……だ。
肘から手までの長さはある刃。騎士が使うような長さではないから振りやすい。

紛れもない、本当に斬るために作られた刃物だ。


カッターナイフよりも、やけに重く感じた。




『(いつか……これで人も切るのかな…)』



ぼんやりとそんなことを考えた。
思考に現実味がないのは仕方がない。平和ボケと言われるまでに日本は平和だったんだ。
そんな国に自分は住んでいた。

明日が問われる時なんて一度もなかったんだ。



《ユキセ!リンクを回収しに行くヨ!
……ユキセ?》

『……あ、ごめんごめん。
ぼーっとしてた』

《もう!責任云々て言われる前にさっさと捕獲しなくちゃ!》

『そうだね。リンクー!!』



小さな勇者の名前を呼びながら走る。
その様子を乳母は静かに見つめていた。



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