王女ゼルダ姫
『ここか……』
花壇に咲き誇る花達が風に揺れて優雅なこの風景。
三方を壁に囲まれ、箱庭のような場所。
奥にに窓があり、そこを覗いている少女がいた。
気配か、声か。
気づいた少女はこちらを振り向いた。
ごてごてじゃない薄い桃色のドレス。着飾らない、けれど彼女の気品さを語る金の首飾り。
ゼルダ姫がそこにいた。
「あ、あの……」
戸惑いがちに少しどもってゼルダ姫に話しかける。
それを見て彼女はクス、と悪戯っぽく笑った。それに自分も便乗して少しだけ吹き出す。
ああリンクは気づいていないのだと。
リンクは二人がいきなり笑い出したことに少々困惑していた。ナビィを見ていたが助ける気は必要ないと判断したのか、そ知らぬ妖精。
哀れリンク。
「ふふ、あなたにはまだ名前を教えていませんでしたね」
声で疑問に思ったのか、ん?と気づき初めてああ!!と驚きの表情を浮かべた。
「き、君が……!!」
昨日遊んでいた彼女の正体に気づいたリンクは口をあんぐり開けていた。
自分はまた笑いそうになったが我慢。
多分まだ口だけは笑ってると思う。
「はい。
私が此処ハイラル国の王女、ゼルダ王女です」
ドレスの裾をつまんでお辞儀をした。
それはまるで一枚の油彩画を見ているようだった。
昨日のリンクと遊んでいた時間には無かった彼女の気品が溢れていた事に対し、リンクは180度違う彼女にどぎまぎしていた。
顔がそう物語っている。
「ユキセ」
『ハイ、時のオカリナをお返しします』
バッグからオカリナを取り出してゼルダ姫に返す。王女という上の立場なので一応敬語にしてみた。
「敬語なしでも平気ですよ」
『ん?
うん、ありがとう。ならゼルダも』
「この姿限定の癖なんです。許して?」
顔の前に手のひらを合わせて
顔を傾けながら少し茶目っ気の入った謝り方に苦笑しながらも頷いた。
あまり無理強いはよろしくないと考えて。
私とゼルダの会話で置いてけぼりにされかけたリンクがハッとして遅れた。
そんなリンクの様子に思わず笑いだした。
『あはははっ!!凄い顔してる!!』
「え!?姉ちゃん知ってたの!?」
『うん、リンクがいない間に』
「なんで!」
『だってあの人達をあのまま追いかけて行っちゃったし。(まあ驚かせる為でもあるけれど)まあほら、それよりもヒスイ見せないと』
「え?……あ!」
リンクはごそごそとポケットから翡翠の宝石キコリのヒスイをゼルダに見せた。
金と翡翠石の彩飾が美しい。
手にとり角度を変えながらヒスイを見つめていた。
『デクの樹という話す樹の精霊からこれを見せる様に……って言われたの』
「……たしかに、夢に見たとおりの物ですね」
「夢…?」
それを思い浮かべたのか、顔を俯き、暗い表情になった。
彼女だけがみた夢。
予知夢。
それはハイラルの未来(サキ)を詠む悪夢と
パンドラの箱の中に残ったという
一つの小さな希望。
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